1925年製 デルトリンテム ジェネシス 完全オーバーホールと新事実 | BLRM ブラッキー リッチモア ~ Be Lucky Rich More!! のブログ

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ギター、双眼鏡、オーディオ、 趣味関連の記事を書いていく予定です。
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私自身が、ワクワクドキドキ出来る事だけを記事にします。
〜 SINCE 2015.4.8

 

 

早いもので、今年ももう師走だ。

 

お陰様で、今年も多くの双眼鏡とのお出会いを頂いた。

 

 

日々、色んな双眼鏡に囲まれて、

 

私はつくづく幸せ者だと感謝している。

 

 

さて、今回紹介させて頂くのは、

 

何と、お祖父様の代から、3世代に渡って受け継がれた、

 

正に、家宝とも言えるような、

 

1925年製のデルトリンテムの完全オーバーホール記録である。

 

 

私が「ジェネシス」と呼ぶ、

 

正式には第2世代に当たる型式である。

 

 

オーナー様からも、是非記事にして欲しいとのご依頼もあり、

 

有難く、記事にさせて頂く事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

デルトリンテム ジェネシスに関しては、

 

これまでにも何度か記事を書かせて頂いており、

 

私自身、今まで何十台も手にして来たのであるが、

 

今回の個体は、初めて目にする珍しい仕様であった。

 

 

当時、かなり頻繁に改良を重ねていたと思われる。

 

 

また、本個体は、お祖父様がどれほど大切に扱われていたか、

 

それが随所に伺える個体でもあった。

 

 

 

まず、この個体が異色なのは、

 

ご覧のように、対物レンズがコーティングされている事である。

 

 

Tコートが、アレクサンダースマクラ博士によって、

 

発明されたのは 1935年であり、その丁度10年前の、

 

このデルトリンテムの製造年である 1925年当時は、

 

まだ Tコーティングは発明されていないので、

 

後から、対物レンズのみ、他の個体から移植、

 

または、交換されたものと思われる。

 

 

初期の、薄いブルーの Tコーティングだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また、恐らくはご自身で交換をされたのか、

 

対物レンズ周りには、「右 左」と、文字が彫られてあった。

 

 

ヴィンテージの個体では、左右のサイズが微妙に違う事も多く、

 

個体間の互換性が無い場合も少なくない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

対物レンズ周辺から、順次分解、クリーニングを行なった。

 

偏心リングは例の如く真鍮性で、これも磨いておいた。

 

 

 

 

 

 

 

この頃の個体には、対物側のプリズムには、

 

遮光カバーがされている。

 

 

因みに、デルトリンテムで遮光カバーが確認されるのは、

 

約70年の長い製造期間を誇るデルトリンテムの中でも、

 

この、ジェネシスだけである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プリズムの台座部分は、非常に丁寧に造られている。

 

 

 

 

 

 

対物側のプリズムには、経年による汚れと曇りが確認された。

 

 

 

 

 

 

下陣笠もクリーニングを行なった。

 

 

 

次に接眼部である。

 

上陣笠も、同様にクリーニングを行なった。

 

 

また、ネジ部品の欠損が見られたので、

 

在庫の部品から補充させて頂いた。

 

 

この部分のネジは小さい故、欠損している場合が多い。

 

 

 

 

 

 

 

さて、この個体がこれまでに何十台も、

 

ジェネシスを手にして来た私も、初めて目にした仕様が、

 

接眼部分の接眼筒のネジ留めである。

 

 

しかも、右側の接眼部のみに確認され、

 

ネジ留め箇所も、2箇所あった。

 

 

このような個体は初めてである。

 

 

 

 

 

 

 

 

このネジの存在に気付かず、

 

無理矢理に接眼筒を外そうとしたのか、

 

ネジ山が潰れてしまっていた。

 

 

また、左右で微妙にネジ切りの間隔も違うようなので、

 

もしかすると、この鏡体の半分は、

 

本来、デルトリンテムではなく、

 

IF方式の、デルトレンティスである可能性もある。

 

 

元々このような仕様なのか、後から改造されたのか?

 

今となっては、謎である。。。

 

 

ただ、同じ1925年製のデルトリンテムであっても、

 

このような仕様は、少なくとも私は見た事がない。

 

 

 

 

 

 

 

プリズム押さえは、ネジ式ではなく、

 

嵌め込み式となっていた。

 

 

ここはやはり、ネジ式の方が断然、作業がやりやすい。

 

 

 

 

 

 

 

大変興味深い事に、

 

フォーカスリングの構造も、初めて目にする構造で、

 

エンド部分が、2ピースの部品構成となっていた。

 

 

恐らくは、極短い期間の製造個体のみに、

 

見られる構造だと思われる。

 

 

クリーニング後、新たにグリスアップをして、組み立てる。

 

真鍮性のシャフトが美しい。

 

 

 

 

 

接眼部のプリズムは、盛大に曇っており、

 

カビも発生していた。

 

 

 

 

クリーニング後は、カビ痕も残る事なく、

 

スッキリと、本来のトランスペアレンシーを取り戻した。

 

 

尚、今回は汚れが酷かったので、

 

通常のクリーニング作業を行う前に、

 

プリズム全体の徹底洗浄を行った。

 

 

 

 

 

 

 

今回は、接眼レンズも曇りや汚れが確認された為、

 

接眼レンズも分解して、クリーニングを行なった。

 

正に、完全なフルオーバーホールとなった。

 

 

 

 

 

 

 

一通り、クリーニングが終了して、順に組み立てていく。

 

工作精度が高いせいか、光軸調整もピタリと精密に決まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真鍮部品のチラ見が美しい。

 

 

 

 

 

光学系も蘇り、完全に復活した、

 

デルトリンテム ジェネシス。

 

 

中心像は、言うまでもなく非常にシャープで、

 

スッキリとした、キレの良い像を見せてくれる。

 

 

この時代のデルトリンテムやシルバレムは、

 

何度覗いても、ドイツと言う国の凄さ、

 

ZEISSと言う会社の凄さを思い知らされる。

 

 

製造から約100年が経過した今でも、

 

きちんとオーバーホールさえしてあげれば、

 

本来の性能を取り戻し、いつまでも使えるのである。

 

恐らくは、200年後も使用可能だろう。

 

恐るべき耐久性と、敬意を表さずにはいられない、

 

素晴らしいマイスターシップの物づくりだ。

 

 

お祖父様も、天国で喜んでくれている事を、

 

願うばかりである。

 

 

 

このような新たな驚きを与えてくれた、

 

デルトリンテムとの出会いを頂いたオーナー様には、

 

心より、感謝申し上げます。

 

 

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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