こんにちは。行政書士もできる往年の映画ファンgonzalezです。
訪問ありがとうございます。
以前“1980年代初頭。gonzalezは自分が住まう街で公開された洋画全体の3分の2を観まくっていた”と書いたことがある。
→下を見てはいけない!『超高層プロフェッショナル』
して、傑作ではなくとも妙に記憶に残る作品群にも巡り逢った。上記の『超高層プロフェッショナル』(‘79)もその一本だ。当時は評価されずとも、今日では所謂“カルト的映画”として人気を博しているモノもたんとある。『ある日どこかで』(‘80)などその典型だろう。あるひは『ビデオドローム』(‘83)とか。
その『ビデオドローム』に先駆けて公開されたこれもそう。
『スキャナーズ』 Scanners (‘81) 104分
梗概
ホームレスのキャメロン・ベイル(スティーヴン・ラック)は自分に不思議な能力があることに気付く。ある日彼は拉致されて、ルース博士(パトリック・マッグーハン)から自分が“スキャナー”であると教えられる。そして、スキャナー達を秘密裏に組織して世界征服をたくらむ強力なスキャナーのダリル・レボック(マイケル・アイアンサイド)殺害を依頼される。彼は自分に従わないスキャナーたちを次々と殺害。
キャメロンは女性スキャナーのキム(ジェニファー・オニール)と逃走しつつも兄と判明したレボックと対峙。空前にして絶後なるスキャン対決の幕が切って落とされる。
監督はカナダ人の異才デヴィッド・クローネンバーグ。『ビデオドローム』も彼の作品だ。
タイトルにもなった“スキャナー”とは本作に登場する超能力者のこと。自分と他人の神経系統をテレパシーを行使して接続し、相手の思考を読んだり、相手の行動や身体機能を自在に操ることが可能。つまりは他人を意のままに操ったりできる。これをもってして“スキャン(脳を走査)”するといふ。
で、スキャンされた相手は鼻血が出たり、悪ければ爆発したりとちょっと恐ろしい目に遭う。
スキャナーに殺意がなければ爆発まではしないのだが。まあ常人にとっては他人様に操られたり内面を読み取られたりして薄気味悪いことこの上も無い。
*『超高層プロフェッショナル』に続くジェニファー・オニール無駄遣い*
では、主役に目を向けてみよう。ベイル役のスティーヴン・ラックといふ俳優は残念ながら本作以外で見掛けた記憶が無い。Wikiってみたら頁がまだ存在しなかった。
なかなか好い表情の持ち主で、どことなく神経質っぽさを感じさせる顔立ちは役柄にぴったりだった。
もう一人強烈な印象を残すのはご存知マイケル・アイアンサイド。ジャック・ニコルソンの弟か従兄弟みたいなマスクで一度見たら一生忘れ難いだろう。本邦で言へばさしずめ蟹江敬三か。
その後多数の映画に出演しているが、有名どころでは『トップガン』(’86)の教官役、『スターシップ・トゥルーパーズ』(’97)の士官役。そしてシュワルツェネッガーの敵役で名を馳せた『トータル・リコール』(’90)などがある。
さて、ここで本作の見どころを取り上げておこう。
先ずは何と言っても伝説的な人体頭部爆裂シーンだ。
ダリル・レボックがとあるスキャナーのデモンストレーションに参加するカタチで壇上に。スキャナーが奴をスキャンしようとすると、能力が一枚上手の奴によって逆にスキャンされ、むぐぐぐぐ・・・ふんぬ~っ。
ズ・・・ボンッ!!
大騒ぎの会場。静かに立ち去る悪党レボック。
そしてクライマックスの最強スキャン兄弟対決。
こっち側に来い。と悪の道へと誘う兄レボックにキャメロンが立ち向かう。
レボックがテレパシーで先制攻撃。キャメロンの顔や腕の血管がぶくぶくと浮き出て出血ぶしゅーっ。
反撃に移るキャメロン。レボックの顔に浮き出るぶっとい血管?互いにスキャンしあう二人。観ている我々もついつい力んで・・・。
キャメロンの顔がぼこぼこ膨らんで出血し始め、皮膚がでろでろと爛れていく。必死に思念を送り続けるアイアンサイドの顔芸が見もの。
遂にキャメロン何故だか両手から発火。みるみる全身火だるまに。両目もぶしゅーっと吹き飛んで。
一見押しているのはレボックだが、焔に包まれても冷静なキャメロン。
一方レボックは白目むき出しになりトドメを刺すのか絶叫しながら体が硬直・・・。
ここで超能力バトルは終了。勝敗の結末は見せません。
次いでエピローグともいふべきシークエンスにも戦慄。
部屋に入ってきたキムは黒焦げの死体を目にする。と、生き残った男が・・・。それは妙に爽やかな表情の悪党レボック!
へ?と言ふことは、キャメロンがレボックの中に入り込んでしまった?捨て身の戦法で奴を支配し勝利したのか?
とまあ、悪が敗北したような感じだが外見がシャイニングゆえ素直に喜べない。
それに今でも色々取り沙汰されているのだが、勝ったのが「僕」ではなく「僕たち」とのこと。これって一体・・・。二人は一つになっちゃったのか?
『ビデオドローム』や『ザ・フライ』でも境界線の溶解と異質同士の融合を描いたクローネンバーグゆえ、さもありなんとも思えるが。果たして・・・。
いずれにせよ不気味なエンディングで完。
と思いきや続編が3まで作られたようだが、そのへんは不勉強で詳細分かりません。
かくのごとくタイトルだけの『脳漿炸裂ガール』のはるか上を行く頭部爆裂シーンは今やレジェンド。ネット上に動画が散見される。
・脳漿炸裂名場面→https://youtu.be/qnp1jfLhtck?t=37
・必見超能力対決→https://youtu.be/Cy6I9ydBSWc?t=9
本作は後味の悪さといふかハッピーな気持ちにもなれない薄暗さがつきまとう。ここがクローネンバーグ流といへようか。
ところで、その前に『フューリー』(’78)なる映画が公開されていた。
やはり超能力者を扱う作品だったが、そこはデパルマ監督。人体爆破シーンをケレン味たっぷりにいろんな角度からスローモーで繰り返し提示。粉微塵に吹き飛んだジョン・カサヴェテス。で、ジ・エンドといふ幕切れが強い印象を残す。
さてさて、時は流れ『フェイス/オフ』(’97)登場。ジョン・ウー乗りまくりの怪作だ。
ここでジョン・トラボルタとニコラス・ケイジの顔が入れ替わるわけだが、たとへ中身が自分の配偶者だとしても外見がアカの他人だったら生活していくのイヤだろなあ。なんて思案した。
ここで当然『スキャナーズ』のあのエンディングシーンが脳裏にまとわりつくことになるのだ。『君の名は。』の入れ替わりですらもこれが想起させられるのである。
クローネンバーグの影響恐るべし。の個人史的回想でした。
本日も最後までお読み下さりありがとうございました。