下を見てはいけない!『超高層プロフェッショナル』 | 徒然逍遥 ~電子版~

徒然逍遥 ~電子版~

「行政書士ができる往年の映画ファン」のブログ
映画・洋酒・カクテル・温泉・書籍 etc
Myニュースレター【CINEMANIA通信】と重複記事あり

こんにちは。行政書士もできる往年の映画ファンgonzalezです。
訪問ありがとうございます。


1980年代初頭。gonzalezは自分が住まう街で公開された洋画全体の3分の2を観まくっていた。


当時我が街には常設映画館が9館

その中で、たまに『宇宙戦艦ヤマト』『ルパン三世』なんかも上映するものの、基本は洋画専門館が3館洋ピン専門館が1館

東宝、東映直営館が各1館で、ごくたまに洋画もかかってた。

 

松竹系配給ルートの映画館では、時々洋画のリバイバル作品をかけてくれた。『ローマの休日』『エデンの東』『燃えよドラゴン』etc。


あとは、にっかつ直営館大蔵や新東宝のピンク映画専門館が各1。以上で合計9館

 

あっ、それとストリップ劇場があったが、そこもごくまれに洋画の興業を打ってたっけ。アラン・ドロンの『ル・ジタン』とかね。


で、自分が入り浸ってたのは洋画専門の2館

ここの上映作品はほぼ全てを制覇。しかも二本立てが圧倒的に多い。残りの1館にも足を延ばすこともある。こちらは一本立ての割合が高かった。

それに、松竹系の小屋にかかる旧作は外せない。
なので、公開された洋画の3分の2程度はクリアしてたってこと。


数多の作品群で、当時も今も話題にならないフィルムもたんとある。でも、妙に強い印象を受けたB級C級映画たちも随分とある。あ、つまらなくて記憶に残る場合もあるけれど。
『Mr.ビリオン』、『ローラー・ブギ』、『天使の復讐』、『ウルフェン』、『アンクル・ジョー・シャノン』、『フィーリング・ラブ』etc。
ホラーものなら『魔鬼雨』。上映期間が一週のみ。予定が合わず断腸の思いでパス。


宣伝の煽りで話題になったものの急速に忘却。というパターンが多いエゲツ無さが売りの怪しい記録フィルム『カタストロフ 世界の大惨事』『ジャンク』


ビッグな俳優、オールスターキャストでも興業惨敗、忘れられたものなら『スウォーム』『メテオ』『世界が燃えつきる日』『アイズ』『ドミノ・ターゲット』『ボビー・デアフィールド』etc。


そんな埋蔵作品群の中からお気に入りを紹介しよう。


『超高層プロフェッショナル』 Steel (‘79) 102分
梗概
建設中の高層ビルで事故死した建設会社社長(ジョージ・ケネディ)に代わり、その娘(ジェニファー・オニール)と長年の相棒(アート・カーニー)が指揮を執ることに。だが、悪徳業者の横槍で工期内完成がどうにも困難。そこで超高層プロフェッショナル大集合。リー・メージャースがリーダー格で計6人のその道のレジェンドたち。作業にはプロの一人が連れて来た助手と現場で志願した二人組も飛び入り参加。合計9人が妨害工作を排除しつつ夜の目も見ずに突貫工事に励むことに・・・。


 

既に細部は忘却しているものの、妙に印象的なのがオープニングのタイトルバック。働く人たちがモノクロ写真へと変化していく。やっぱ映画は冒頭の出来栄えが作品全体の印象を左右することが多いかな。


物語は聖林映画伝統の、有能かつ一匹狼的はみ出し者が集結して難事に当たる。というフォーマット通りの、何の曲もない内容。キャストもやや地味め。でもある程度の知名度がある俳優陣。
主役リー・メージャースは懐かしのTVドラマ『600万ドルの男』で名を売った男。600万ドルって当時の1ドル約300円のレートでは、なんと18億円。

懐かしいのはこの方も同じ。ジェニファー・オニール『思い出の夏』(‘71)にてブレーク。本作でも輝くような美貌を披露。モデル出身だけあって衣装のお召し変えも満載。むさ苦しい野郎どもの汗と埃っぽさ漂う画面にて、これぞ“はき溜めに鶴”というが如き清涼剤の役割を果たす。にしても美しい。

『ハリーとトント』(‘74)でオスカー主演男優賞受賞のアート・カーニーが主人公らをサポート。
すぐに死んじゃうけど名脇役ジョージ・ケネディも威勢のいい現場主義者の社長がはまってる。


プロフェッショナル達も個性豊かで楽しい面々。
主人公と良好な関係にある二人、アイリッシュ系、ズボラで不潔だけど気の好いオヤジ


眼光鋭くストイックな雰囲気の寡黙な大男、ナンパのテクが抜群の陽気なイタリアーノ


そして他のメンバーから敬遠されてる嫌味なヤツ
この嫌われ者but優能なプロ。が、ドラマの起伏に寄与することは言うまでも無し。

 *急遽参戦二人組*
 

物語の構成も安心の聖林印。
主人公と紅一点が良好な関係に発展するのも定石通り。初対面では反発しあうのもお約束。


その主人公は人望あるリーダー。しかし、訳ありで以前のように動けない。それは超高層プロとしては致命的。
この隠された不具合が暴露され、メンバーの失望を買い、如何にして克服するかといったサブストーリーも既視感あり。


悪役は終始一貫妨害工作にせっせと励む。
様々なアクシデントと悪徳業者との戦いを乗り越えての結末は勿論予定調和。大団円。

 *命がけの超高層*
 

最後まで外さない筋運び。でもやっぱりそこそこ面白い。フォーマットに忠実堅実の映画の底力を見せつけられる。と言ったら言い過ぎか?
いやいや、撮影現場もほぼほぼ限定され、ギャラもさほど捻出できない。全体的にB級感が否めない。

だからこそ、そんな時こそ万人受けするゴールデン・ルールのフォーマットに従うべし。かくして低予算ながらもまあまあ観られる作品に仕上がるというものだ。
しかも舞台としては珍しい高層ビル建築現場。ちょっとした変化球。


当時はまだまだ映画経験が少なかったので、面白いなあ、と感じたのかも。そう疑っていたが、経験値の低さを差し引いても結構楽しめるフィルムだったと今では思う。


高所恐怖症の気が無い人は、機会があったら気楽に観てもらって良いだろう。


本日も最後までお付き合い下さりありがとうございました。


追記:執筆後ちょっとググってみたら意外やマニア受けしているらしく高評価で驚いた。


Steel
製作:リー・メージャース
監督:スティーヴン・カーヴァー
音楽:ミシェル・コロンビエ