こんにちは。行政書士もできる往年の映画ファンgonzalezです。
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またもや『チア☆ダン』ネタだが、“バブリーダンス”の伊原六花がザ・ブルーハーツの曲で振り付けしてはどうか。と提案するエピソードがある。しかし、何と今どきのjkらはブルーハーツを知らないのである!似たような話は『RE Life リライフ』(16)にも出てくる。こちらはBump of Chickenだったが。
だが、未だにブルーハーツの世界観を支持する一定程度の層は健在だろうし、十代の少年少女らが新鮮に感じて支持する事もあるだろう。本作はどっちの層が観てもOKだ。
『ブルーハーツが聴こえる』 (‘17) 159分
構成
第1話 『ハンマー(48億のブルース)』尾野真知子、角田晃広、伊藤沙莉、萩原みのり監督:飯塚健
第2話 『人にやさしく』市原隼人、高橋メリージュン、浅利陽介、加藤雅也、西村雅彦 監督:山下天
第3話 『ラブレター』斉藤工、要潤、山本舞香 監督:井口昇
第4話 『少年の詩』優香、新井浩文 監督:清水崇
第5話 『ジョウネツノバラ』永瀬正敏、水原希子 監督:工藤伸一
第6話 『1001のバイオリン』豊川悦司、小池栄子、三浦貴大、石井杏奈 監督:李相日
見ての通り6人の監督によるオムニバス形式作品である。
中でも第5話は全編セリフ無し、といふ実験的な作品で強烈な印象を残す。第1話は導入部として敷居の低いコミカルな作品。第2話はSFの体裁を借りて、第4話は小学生男児の屈託を、第6話は福島原発事故をベースに。と、バラエティに富むドラマ群だ。
本稿では第3話にフォーカスしたい。なぜか?山本舞香が出演しているし、要潤が斉藤工と元ヲタクコンビを演じているからだ。やっぱ演者に惹かれて観るのが映画の基本だね。
ところで、監督が井口昇である。ん?大丈夫かねこの人で。といふ一抹の不安がうっすらと…。いや、最近はフツーの映像作品も手掛けているし。TVドラマ『マジで航海してます』とかね。
まさか『片腕マシンガール』(07)や『デッド寿司』(13)みたいな破壊力抜群の過去作品みたいにはならないだろうさ。たぶん。
で、ドラマは一人の脚本家(斉藤)がロックを題材にした脚本を執筆するのに難儀しているところから始まる。高校時代に憧れていた級友(山本)を想いつつ当時の体験をベースにして。しかし、彼女は既にこの世に存在していない。
ここで何故か当時からの親友(要)と便器に吸引されてタイムスリップ。彼女が事故に遭遇する日に出現。何とかして彼女が生き長らえるようにすべく奮闘するが…。
これなら青春ドラマとして成立しやすいだろう。かねてよりタイムトラベルものは素材からして既に面白い。と主張してきたが【青春×タイムスリップ】は、その王道だと思う。ので、本編も期待感が高まるよ。
で、どうだったかといふと、確かにおもろかった。が、驚いたことにいつもの井口節が満遍なく発揮されていたのである。ので、オムニバスの中でこのドラマだけが突出してチープなB級作品となった印象だ。
その極めつけは、斉藤が書き直した過去がそのまま出現。何と山本が事故を回避できるように彼女の両手を金属製の強靭なハサミにしてしまったのだ。これにより落下してくる鉄骨を粉砕すべし。という心遣いなのである(笑) しかし、それにしても…。
ギターを弾こうとしたところ全ての弦が切断。慌てふためくボーイフレンド。悲鳴を上げる女子たち。捕獲しようとする教師。ふりほどくやコンクリ製の壁をざっくり削る。大騒動に発展。斉藤は彼女の手、ハサミだが、を引いて逃げ出す。
こんな馬鹿馬鹿しいドタバタや、手・腕が金属製の道具と化すなんて井口監督ならではの荒技だろう。しかも特撮が実にチープ。あえて狙ったのか?
過去を書き換えたせいで生じたひずみ、といふのもよくわからない現象だ。
さらには、こんな不都合な身体に変化している山本がすっくりとその現実を受け入れてにこやかでいることや、初見のノート型PCをハサミの両手で見よう見まねでブラインドタッチよろしく連打したり、自分が助かることがなければ生じたひずみも元通りになるだろう、と自己犠牲的な精神を示すなどご都合主義も甚だしい。
だが、そんなでたらめさなんて気にすんな。とばかりに井口ワールドを強引に展開する一種の開き直りともいへる映像に直面すると、整合性なんてどうでもよくなってくるのがまた可笑しい。
他の収録作品がちょっと重くてシリアスだったりするので、この落差が却ってすがすがしい心持にさせてくれる。思想性や観念的な要素は一切排除。の、どストレートな構成がシンプルで大変よろしい。
そう、恋した少女の命を救いたい。との青春時代の熱き想い。ただひたすらそこにフォーカスしている。
しかも、劇中にブルーハーツのCDを小道具として用いるなど直截的な言及も分かりやすいし、エンディングも当時の山本を撮った8ミリを映写して情緒的に閉じられる。など、終わってみれば定石通りの映像作品に仕上がっていた。のは監督の狙い通りだろう。
ちなみにだが、当時の斉藤は力士のごとき肥満児で、要はやせっぽっちのチビである。鏡を見て驚く二人。もちろん演者の斉藤と要が学ランを着ているのだが、周囲の生徒たちから見るとデブとチビの映画ヲタクコンビの設定だった。
やっぱり山本舞香は勿論、斉藤工と要潤のコンビはナイスな人選で◎
私見だが、実は井口昇監督は和製エド・ウッドじゃないかと密かに睨んでいる(笑)
本日も最後までお読み下さりありがとうございました。
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