ナット・キング・コールの遺作『キャット・バルー』 | 徒然逍遥 ~電子版~

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こんにちは。行政書士もできる往年の映画ファンgonzalezです。
訪問ありがとうございます。


楽しい西部劇が観たいときに選んでもらいたいのがこれ。


『キャット・バルー』 Cat Ballou (‘65) 97分
梗概
東部で教育を受けて教師となって帰郷したキャサリン・バルー(ジェーン・フォンダ)は父親の農場が土地開発業者から立ち退きを迫られていることを知る。用心棒を雇うのが良い。ということで彼女は西部劇自伝小説の主人公に助けを求める。

だが、やって来たのはただの飲んだくれで手に余る厄介者(リー・マーヴィン)。そんな矢先に父親が不気味な殺し屋に撃ち殺される。下男のネイティブと、道中偶然知り合った二人のお尋ね者と合わせて五人で立ち向かう。

手始めに列車強盗で資金を獲得。それが土地開発業者の金だった。全面対決を避けられぬ状況に…。


ジェーン・フォンダ主演の西部劇とは珍しい貴重なフィルム。しかもコメディ。
また本作にてリー・マーヴィンがアル中まがいの酔っ払いガンマンを演じてアカデミー主演男優賞を獲得。


で、J・フォンダがタイトルのキャサリンキャット・バルー。まだ若くて元気はつらつ。のびのびとした芝居が作品全体を軽やかに保つ。しかもそれだけでなく意外なほど上手い演技を魅せる。


ワンカット撮影のダンスシーンが実にいい。

帰郷の車中で知り合った伯父甥コンビのお尋ね者と再会するが、踊りながらのうろたえ振りや驚きを隠しつつ踊るさまがマジ見事。顔の表情や視線の動かし方がとても上手い。


体は動いているものの目をきょろきょろさせて落ち着かない様子。手振り身振りもなおざりになりがち。そんな芝居がオーバーにならずに収まっていて。
でも彼女あまりにも親父さん(ヘンリー・フォンダ)似で、ところどころ彼の顔がダブって笑ってしまう。


後年のシリアスな役柄も悪くはないが、娘時代の作品も肩の力を抜いた芝居を楽しめると思う。あ、『バーバレラ』はもう少し後のこと。


で、リー・マーヴィンだが、実は二役を演じていた。酔いどれガンマンと不気味な殺し屋である。

この殺し屋が実の兄という設定。なので二人が同一フレーム内に収まるシチュエーションで、殺し屋はこちらにずっと背を向けていた。

それにしても彼は高評価を得た。だってこの年のオスカー候補には、リチャード・バートン、ローレンス・オリヴィエ、ロッド・スタイガー、オスカー・ウエルナーといった錚々たる顔ぶれなのである。彼らを押さえての受賞は凄いことだ。


作品についてちょっと言及しておくと、オールドフィルムにありがちなタイトルロールが本の頁をめくるタイプである。これから始まる物語は…みたいに期待感を高める。

そんな趣向に相応しく、二人の芸人がバンジョーを弾きつつ粗筋やらなんやらの口上を述べる。彼らが劇中の要所要所で登場し、我々に解説を試みるが、道を行き交う人々には彼らの姿は見えていない。


つまりこの二人は劇場の幕間に登壇してコントをやったり掛け合いをしたりする芸人と見てとれる。日本的な立場で言うならさしずめ弁士といったところだろうか。


そして、一人は黒人なのだがあっと驚いた。何とナット・キング・コールなのである!
この数カ月後に肺がんで世を去ることになる。が、そんな素振りは微塵も見せない。いい声で歌を披露する。彼の遺作となるのだからこれまた貴重なフィルムと言へよう。


あ、オープニングのパラマウント映画の自由の女神似ポーズのお姉さん。彼女がアニメのキャット・バルー(らしきガンマン)に変身し拳銃撃ちまくるという巻頭シーンも貴重な映像だ。


何かの折に思い出したらトライしてもらいたい作品である。

 *映画史上の名場面。馬の前足に注目*
本日も最後までお読み下さりありがとうございました。