こんにちは。行政書士もできる往年の映画ファンgonzalezです。
訪問ありがとうございます。
個人的にはタイムスリップorタイムワープものは素材自体が既に面白いと思う。
また『転校生』や『君の名は。』で証明される通り、外見と中身の入れ替わりによるズレが笑いを生むのも面白い。
なので並みの脚本でもそれなりに楽しい作品ができあがるはずだとも思う。
『あやしい彼女』 (‘16) 124分
梗概
戦災孤児として、未亡人として、常に苦労続きの人生を送って来た元気一杯のお婆ちゃん・カツ(賠償美津子)73歳。一人娘・幸恵(小林聡美)とその一人息子・翼(北村匠海)と同居していている。
あることをきっかけに自称二十歳の若さと容姿を手に入れて大鳥節子(多部未華子)と名乗る。
のど自慢大会で音楽プロデューサー・小林(要潤)と孫に目撃され、孫のバンドでボーカル担当に。路上ライブで昭和歌謡を熱唱し、アップされた動画が高評価。小林からも声がかかり、バンドはプロデビューも射程内に入るが好事魔多し。孫が交通事故に遭遇。バンドとお婆ちゃんの行く末はどうなる?
↑これも宣伝用の絵図が気になって仕方がなかった↑
一種のファンタジーなので、細部に突っ込みを入れるのはやめておこう。気になるところを封印すればOK。笑いと涙を約束できる。韓国映画のリメイクだが上手くいったと思う。
でも、ここは脚本力や演出力のはるか上を行く多部未華子の妙演こそが感動を生む。あ、パワフルなお婆ちゃんに扮した倍賞美津子の、硬軟織り交ぜた芝居の妙も無論だが。
で、多部だがそのコメディエンヌぶりが素晴らしい。しかも身体的アクションが軽やかで優美さすら感じさせる。
例へば、公園で一夜明けて身体の具合がすこぶる宜しい。と実感し喜びを表現するシーンなどはもうミュージカルのダンスシーンさながらである。ここは思い切ってミュージカル仕立てにしても良かったんじゃないかと思えてくる。
加えて歌唱も頑張る。「見上げてごらん夜の星を」「真っ赤な太陽」「悲しくてやりきれない」そしてバンドのオリジナル曲。これらを吹き替えなしで歌いあげる。
しかも振り付けは基本中の基本のステップタッチを主軸に簡易な足さばきばかりだが、体の軸がぶれずにしっかりと動いていてプロっぽく見える。gonzalezがまねしてみてもあんなにきれいには決まらない。
TV出演時の「悲しくてやりきれない」は目頭と鼻の奥がじんとなる。
ここは映像のマジックが最大限の力を発揮しているとはいえ、見た目二十歳のお婆ちゃんの半生記を追体験すると熱いものがこみ上げてくる。
かくして全編に亘って多部の魅力が炸裂する。
かつては“ぶさカワ”などと褒め半分の言われようだったこともあった彼女。そりゃ確かに超個性的顔立ちで好悪はっきり二分されるだろうが。個人的にもいまだに慣れるというか飽きるというか、そんな心境には至らずに、彼女を見るにつけ常に新鮮さを感じるし。
劇中でも銭湯でのぼせて白目むいてぴくぴくしたり、巨大なまぐろの兜焼きの隣で変顔して写真撮られたり。お世辞にも美しい可愛いとは言い難い(むしろグロテスク?)表情を恥ずかしげも無く披露する。
でも、こういう女優っていいよね。俄然好感度アップだ。
そんな多部も着実にキャリアを積み、もはや邦画界の至宝とでも言いたい女優だ。
『君にとどけ』(‘10)『ピース・オブ・ケイク』(‘15)などの青春恋愛ものからNHKの朝ドラ『つばさ』やTVドラマ『デカワンコ』『ドS刑事』などの喜劇。映画もTVも任さんかい。てなもんである。
*『デカワンコ』 変顔(笑)*
ところで本作、音楽担当スタッフに小林武史がクレジット。なるほどね。歌謡的側面の強いはずだ。劇中歌の完成度もかなりのもんである。要潤も小林某という役名だったし。
重要脇役の銭湯の主人・志賀廣太郎が相変わらずいい声している。芝居も巧みだ。こういう役者は貴重だね。
初見だが、その娘役の女優も素晴らしい。この人が一番笑わせてくれる◎
要潤もきれいな顔立ちで喜劇をこなすその姿勢に好感する。
TVドラマ『キミ犯人じゃないよね』も面白かった。ちなみに、うどん県の副知事を拝命ってところも素敵だ。
小ネタを言へば、全編に亘りお婆ちゃんの憧れた『ローマの休日』のヘップバーンが投影される。
写真館のディスプレイ写真。美容室でヘップバーンのグラビアを指して同じヘアスタイルを希望する。
洋品店と靴屋で購入する衣装。銭湯主人のヴェスパ。階段でジェラートかソフトを食べている女性とその衣装。お姫様は休日と割り切って元の生活に戻る決心をした、という台詞。
もしかしたら、要潤がスマホの写真を確認するところとか、戸外のテーブルで兜焼きと共に写真を撮るのもそうかも知れないし。
自分のような『ローマの休日』ファンには堪らないネタがちりばめられている。
しかし120分は長過ぎか。やや冗長なシーンも散見されるので編集でもっときびきびした仕上がりも可能だろう。
でも、一か所面白いカットのつなぎが印象に残った。
多部をスカウトしようとつけ狙う要潤が痴漢と誤解され警察に路上で身柄を拘束される。
次のカットは警察署の外観(痴漢に注意。の看板が見える)。
で、その次のカットは当然彼が尋問されているところなどが予想されるがさに非ず。そこに映るのは小林聡美と志賀廣太郎だ。
ちょっとした肩すかし。こういうのっていいよね。
ここまで書いてて気付いたが、この作品結構気に入ったみたいだ。
でも最大の謎は、彼女が元に戻った時に居合わせた人々の反応だ。ちょっとした騒ぎが予想されるのだが…。ま、ここもスル―しなきゃね。
本日も最後までお付き合い下さりありがとうございました。