過去のブログ(相続放棄の道)でのやり取りがあり、事情を理解してくれた善意の亭主の身内の皆さん方。相続権のある身内11名は本家姐さんと赤鼻さんの援護射撃もあり皆がこの場で、私と同じくらい危機感を持ってくれた。

でもいきなり2億でまだ、事情が呑み込めない人もいるし、嫁や旦那さん、子どもらにも説明しなきゃならない人もいる、遠方で葬儀に来られなかった相続人も2名いて、普段から電話も難しいとも聞いた。

 

「数日以内に私から書留扱いで相続対象者に郵便物をお送りします。そこに事の詳細を改めて書き起こしますので。家系図も付けるので、自分が法的に相続人となることを自覚してください。そして、この件は弁護士を入れての対応になります。私共でこちら地元のこの手の事件に強い弁護士さんを探してあります。その方に今回の相続人11名が一緒に同じ相続放棄手続きを行うのなら、弁護士さんもやりやすいかと思われます。今回の該当される方々が個々に弁護士を探して依頼するのは、私共で制限することではないのでお好きにされてください。でも、一から必要書類を揃えて何度も自ら出向く必要が生じることは覚悟してください。こちらの故人の戸籍も住民票もある土地の弁護士なら、私とお母さん(ヨシエ)で出来る限りのことで動くことは可能です。

郵送物は私が発送して、相続人の手元に届いたかを郵便の追跡で確認します。

届いた日から二日で考えてください。私からお電話してこちらの弁護士と一括して対処してもらうか、自分で弁護士を頼み行動するかの意思の確認をさせて頂きますので。11人全ての方の意思の確認が出来たら、私と母が弁護士にお願いに行きます。

相続放棄は3か月以内に済ませなければなりません。初動の遅れで最悪2億を背負うことを忘れずにいてください。」

 

この集団の中で自分はかなりの若輩者である。でも、本家姐と赤鼻さんが両脇にいてくれ、私の言葉は威厳に満ちた。

遜った言い方ではダメと思い、敢えて上から目線で命令に近い言い方ではあったが、これは航空機の不具合の際にキャビンアテンダントは丁寧な言葉で「頭をおさげください」などとは言わない。危機が迫る中、「頭を下げて!」と大声を出す。ギリギリの状況では「お願い」なんぞしていては統率は取れない。本家姐と赤鼻さんのおかげで、私は「偉そうに」などと陰口も叩かれず済んだ。

 

 

葬儀を終え札幌に戻った私と亭主。亭主を仕事、娘を学校に送り出し、私はこれまでの経過と今後の方針をA4用紙8枚にして11部作製。局からレターパックで一斉発送した。ここまで二日くらいだったと思う。葬儀から三日後、私は列車に揺られヨシエ(姑・仮名)の元へひとり向かった。

 

高齢者と一括りにしては語弊があるとは思うが、ヨシエの場合、幾日か経ち「何となく普通に過ごせているし、何とかなるんじゃないかフィルター」がかかっていた。滝汗

「やっぱり弁護士さんを頼むって大袈裟かもねぇ。」

と、言いながら

「実はあれから何だか難しそうな書類が出て来たのよよっ!」

と、年季の入った茶封筒を私に差し出した。

ヨシエ、その「大丈夫フィルターを私にも貸してくれ」と思いつつ開封すると、ヨシエ姉の名前で何と北海道の山林を保有しているという書類が。ひとつひとつをスマホで検索する。確かに山林ばかりだったが、その中に埋もれる様に某市街地もあり、所有した土地の近隣には保育園やら住宅がある。しかも、ヨシエ姉が所有する土地はグラウンドのある保育園の敷地をはるかに超える広大な敷地なのだ。調べた限り、それらの土地は売り払っても2億返済の五分に一にも満たないとわかり、厄介ごとが増えただけだった。

 

 

相続放棄の選択の際に、実は後から土地が見つかったなんて分かれば揉めるのは明らか。私はそれをスマホで撮影して帰宅。送った郵便物を受け取ったことを一軒一軒電話で確認しながら、この土地の事も話をした。後に弁護士が入ってくれれば土地の説明も詳しくしてくれるだろうから、確認してもいいかと思うし。でも、土地だけ相続して借金だけいらないは出来ないから、この土地には2億以上の負債もついて来ることを覚悟してとも伝える。

数日で相続対象者全てと連絡がついて、皆が相続放棄を選ぶ、土地はいらない、弁護士はみんなと同じにしてくださいと同意を得た。

 

私は自宅から弁護士事務所宛てに電話で面談予約を申し入れた。30分5000円の相談コースからだが、ここで無料相談に拘っていては放棄期限の3か月を逃してしまうので、問題が無ければこの方に受任してもらえればと思って出向いた。

弁護士さんは落ち着いた方で、私とヨシエに分かる文言で説明をしてくれ、私もヨシエもこの方にお任せしたいとその日に契約を交わした。

11名の相続対象者全ても同じ放棄を望んでいて、是非ともこちらの事務所で手続きをお願いしたら快諾された。

この日のうちに私は故人となったヨシエ姉の戸籍やら、今回相続対象者となってしまったヨシエの戸籍やらを取りに市役所へ同伴して取得して、現時点で必要なものを弁護士さんに託した。

 

実は本家姐さんが「今は亡き夫の妹の不始末は本家が責任を取りますから」と11名分の弁護士費用をポンとヨシエに送金していた。100万にはならなかったが、相応の費用はかかった。ヨシエの財布は一時、見た事も無いくらい膨らんでいたが、弁護士事務所を出る頃にはいつも通りのスリムな財布に戻っていた。

 

私が弁護士さんに指示されたことは、弁護士さんがヨシエ以外の人たちと個々に契約書を交わさなければならないが、郵送で時間がかかるし、少しでも時間を短縮するために事前に自分の戸籍を取得しておくようにだった。私はヨシエを除く者たちに電話で連絡をしてそれを伝えた。この先は私ではなく、弁護士さんとあなたのやり取りとなるが、何かあれば出来る範囲でサポートもしますから、相続放棄が出来るまで遠慮なく電話くださいとも加えた。

 

何でこんなことをここまでするのか、私は。

お節介+新しいことや知らない事に触れるのが楽しいからしか理由はなかった。

そんな気持ちになったのは、やはりヨシエの人間性が好きだからしかないと思う。

 

 

自分の時の相続放棄もだが、弁護士さんに一任すると気分が楽だった。

要所要所で「今、ここまで進んでいますよ」と電話も来て進捗状況も把握できていたし。

 

 

そして、相続放棄期限前、11名の相続放棄は無事に認められた。

それに関する書類がヨシエ(他10名)の手元に届いたが、弁護士さんからは、その書類は放棄した事が書かれている大切な書類なので、絶対に紛失はしないようにと念を押された。

 

 

 

書き出すとこれと言って特筆すべき事もないのかも。

ただ、何かが起きているのなら、常にそれを紙にでも書き出して可視化出来るようにしておくことをお勧めします。言葉だけでは伝わらないし、書き出すことで、他者とも情報共有もしやすくなるかと。

 

 

弁護士って聞くと「お高い」と思う方もいるかも知れないが、その仕事は金では買えない安堵感を齎せてくれる。

市町村で無料法律相談は行っているので、何かあればまずはそこに申し込み、相談に行くことを私はお勧めします。

でも、残念ながら弁護士もジャンルで得手不得手があるのも事実。

一人目の弁護士で納得できなければ、それで終わったとかこれしか術はないと諦めず他の弁護士を探しましょう。依頼する側との人間的な相性もあるし、ここは妥協すべき個所ではないと思います。

支払いは今回は本家姐さんが一括支払いできるようにしてくれたので、金の心配はありませんでした。

それ以前の私自身の父親からの相続放棄の際も、実は私は弁護士4人くらいハシゴしてます。

単なる相続放棄だけなら簡単だったけれど、これにまつわる父親の兄弟らとのもめ事が勃発した際の法的対応も込みにしたので、それらの私側の事情を理解してくれる弁護士を探すのに難儀しました。

 

トラブルの予兆の段階で話を整理して無料相談に駆け込むのは初動としてはアリではないでしょうか。

 

相続は「いいもの」も「負債」も相続しなければなりません。

特に頭の片隅にいれた方がいいと思うのは、お子さんを連れて離婚されている方です。

離婚して「夫婦」は紙一枚で「他人」になってしまいますが、お子さんの生みの親は不変です。戸籍にも実父実母として記載され続けます。

離婚して何十年も経ってから、交流の絶えていた親が亡くなった場合も、今回のヨシエの様な事が起きうると思います。

夫婦の縁は離婚で切れても、親子の縁は切れません。資産であろうが負債であろうが相続人となる人には受け継ぐことになります。人間、どこでどうなっているのかなんて分からないし、縁を切って終わりではなく、我が子には「その後」も有り得ることを伝えておく必要を私は思いました。

 

 

今回のヨシエの件は私とヨシエの関係が良好であったこと、嫁の私が知らない事にワクワクして進むのが好きだったこと等々、今考えると相続人に送った郵便物だけでも今は気力体力的にも出来ないです。

あの後、私は本家姐さんから「よくやった」とお褒めの言葉と金一封を頂いた。

 

 

と、駆け足で顛末を書きました。

これはもう弁護士が助けてくれたって話なんです。

 

では、読んでくださりありがとうございました。

 

 

相続放棄への道 おしまい