スズメが気になり目覚まし時計より早く目が覚めた。

認知症を抱えたばあさま(実母)はまだ寝ている。

ひとまずトイレに行こうとしたが

「(。´・ω・)ん?右足が動かない」。

右足踝あたりから下が脱力し、自分の意志通りに動かすことが出来ない。

一定方向には辛うじて動くけれど、それ以外はビクともしない。

すぐに右手や右半身を確認するが、足以外に麻痺はないようだ。

ばあさんが起きると面倒なので、取りあえず這ってトイレへ。

用を足しそのまま亭主の部屋へ行き、右足の麻痺で歩行が困難になっていると伝え半日でいいから休んで病院に付き添って欲しいと伝えた。

私は前回の入院時も、手術や出産時も亭主や母や身内を病院に同伴させることが嫌で一人で対処し続けて来た。病の家族の同伴はするが、自分に関しては嫌。金と保険証さえ預けてもらえば無問題。

そんな私が「半日休んで付き添って…」と申し出たから、亭主は驚き飛び起きた。

 

 

脳疾患なら即、救急車だろうけど足以外の麻痺は無く、何よりこのご時世に救急車を呼ぶのはやはり躊躇う。

取りあえず救急車を呼んだ方がいいか悩める人のためにある「#7119」の存在を娘が教えてくれて電話をした。

出現症状を伝えると、電話のお姉さんは「このままこちらから救急車を要請しますよ」と。

いや、今日はばあさまのデイサービスの日だし、そもそもばあさまを放置して私が病院に行く事態あり得ない。

娘に仕事を休んでもらい、デイサービスの支度をしながら近所の脳外専門の病院に電話をする。

「受付開始前でも来てもいいですよ」と言われたけど、9時前に外来で行くと伝え自分の症状を受け入れてもらえることは確認した。

 

 

病院に着いて「次の症状のある方は、すぐに近くの職員に申し出てください」との張り紙があり、自分の症状が当てはまっていたのでそれを伝えたら、車椅子を用意されて、迅速に診察→MRIへと。痺れも麻痺も深刻さを増していて、私も車椅子を素直に受け入れた。

この時点で医師も私も「脳じゃないな」とは察していたけど、「脳に問題がないと確定しましょう」と言われ検査開始。

 

もう綺麗な丸いツルんとしたお脳画像。血管も綺麗だと褒められた。

でも、医師の頭の中には既に私の足が麻痺した理由が明確に描かれていた。

医師に言われる動作をするが、いくつかは出来ない。

足を動かす意思があっても、それが足に伝わっていない様を見て、医師はメモに戒名みたいな漢字の羅列を書き出しこちらへ差し出した。

 

 

右腓骨神経麻痺(みぎひこつしんけいまひ)なんて言葉を私も亭主も初めて聞いた。

ってか医者って凄いな。私は今も虚血性腸炎や外反母趾で手術をした等、漢字をスラスラ書けずにスマホで調べて書いているのに、医師は理系であるが、難しい漢字をすぐに書ける文系脳も持ち合わせている。普通の漢字検定よりも医学関係の漢字の方が絶対に難しいよなってメモを前に思った。次に生まれ変わることがあっても漢字オンリーの中国に生まれたら、私の様なバカは生きられないだろうなどと不安になっていた。

 

どうやら点滴引き抜いて退院した翌日、ばあさまがトイレに行く途中で転倒し、慌てて抱き起そうとした際に70キロ近いばあさまを抱え、私は膝と腰をかなり痛めた。腰は椎間板ヘルニアの手術をしているし、膝は交通事故で靭帯断裂、PTAのバレーボール大会で半月板損傷で手術もしている。たぶん、あの激痛時、足の先端へ行く神経にダメージがあり、以降何かが起きていたらしい。

「取りあえず3か月、投薬とリハビリで頑張って、それでダメなら装具を着用して…」

爽やかな医師の何だか妙に歯切れの悪い語尾だった。

 

 

会計待ちしながら「後は会計して薬貰って帰るだけだし、今から仕事行きなよ」と言うと、躊躇いながらも亭主は仕事に向かった。

いや、麻痺したままだから病院を出て調剤薬局行って家に戻るってのが、実はかなりしんどいんだが、誰も頼れない状況で今の自分がどこまで出来るのか知りたくて、薬袋を手にすると私は通りを歩きだした。

「げっ、今日は札幌30℃超えるって言ってたよな…」

髪の無い頭に直射日光はキツイ。

歩行も足を引きずるのではなく、ニワトリが歩くが如く歩く。踝から下が麻痺してるので膝関節で踝をあげないと前進できない。

誰に教わった訳ではないが、帰宅して調べたら、この患者さん特有の歩き方として命名までされていた。

 

↑関係サイトより転載

 

「スズメ食堂」を開設したら、自分が「鶏歩」になるという壮大なオチ。

自分的には「テツandトモ」の♪なんでだろ~、なんでだろ~♪の歌に合わせニワトリの様に歩く、あの姿が今の私だと思う。

帰り道、すれ違う人はふざけているのかと思うように見る人もいれば、強固たる意志を持ち目を合わせようとしない人もいたり様々な反応があった。これからしばし、私は人の数だけあるだろう視線や反応を堪能することになるだろう。

まぁ、そんな動きをしないと歩けない訳だから、生きることを優先したら人の目なんてどうでもいい。

今は「テツandトモ」よりも、「夜中にね、ベッドのマットレスの中から幽霊が出て来たんだよ」と言い出したばあさまの方が数万倍、頭痛のタネである。

 

身近に腓骨神経麻痺の方がいたらどうか気遣ってあげてください。

完治もあれば身体障害認定され、障害年金受給対象にもなる厄介な病なので。

麻痺と言う言葉を要所要所で使っていたけど、自分の身体の一部でさえ、意思があっても動かせない「麻痺」って恐ろしいことなのだと身をもって知りました。

 

虚血性腸炎のネタ出すタイミングがぁぁぁチーン