「何だか最近、調子がよくねぇなぁ…」

すべてはここから始まっていた。らしい

 

 

土曜日、娘の卒業式があって「久々にパーマしちゃおう」と思いたった。が翌朝、何だか身体が重い。動くのも面倒なくらい。

でも、何とか立ち上がって美容院へと。

 

いつもの美容院。

いつものジャニオタ美容師さん。

で、いつものお値段のいつもの仕上がりでお願いして。

ロッドを巻き終え、パーマ液を掛けられた瞬間、いつもは感じたことのない、刺すような痛みを感じた。

鏡の中の自分の顔が瞬間、歪む。

 

「痛くありませんかぁ?」

何年もここに通っていて、必ず訊かれる言葉に、体感とは裏腹にいつも通りに「大丈夫っす」と言ってしまった自分。

 

パーマ液がたくさん掛けられたであろう頭皮は平気だったが、額…毛の生え際あたりがもう『かちかち山の火を背負った狸さん』状態。でも、卒業式も近いし、ここで止められても困るしなぁと何事も無かったようにパーマを続行した。

2液目を掛けられた時、腱鞘炎で曲がらないはずの手が思い切りグーになった。

 

そこからあまり記憶がない。もう、心の中は「痛い、熱い、痛い、熱い…」を繰り返していて、記憶が定着するような状況ではなかったんだと今は思う。

 

そこから用があって街中を半日歩いたが、途中から何となく行き交う人の視線が気になり始めた。

「髪型、似合ってるのかな?」

後にポジティブなバカとは、救いようがないと思ったが、偉人さんの素晴らしい言葉を見つけた時、いつも時代にも自分のような者がいたのだと思うと、少しは気が楽になった。

 

ゲーテ兄貴、仰る通りです。

 

自宅に戻り鏡を見て茫然。

痛かった生え際が真っ赤になって、何やら赤から次の段階の皮膚が消えて肉が見え始めている箇所が出始めていた。

 

痛いんだけど、鏡の中の自分の顔に既視感があって、患部を洗い流しながら、その既視感の元を必死に考えた。

で、見つけた。

こりゃ、確かにみんな私の顔から目を離せないわな。

 

これこれ。『妖怪・まくらがえし』。ホントにこんな風に。赤身も腫れも。これに体液でぬらぬら、皮膚の中の赤身も見えていたら同じよ。つーか、まくらがえしよりも怖いよな。

生え際の赤い腫れが時間経過と共に、眉毛や眉間、鼻筋と下がって来てるじゃん!もう、まくらがえしだけじゃない。妖怪大行進だよ。

 

夜だったのでネットで調べるしかなかったが、どうやらパーマ液でアレルギー反応を起こしたらしいことまでは突き止めた。

ってことは、私はもうパーマも髪を染めることもできないって訳か…

 

その後、帰宅した亭主はオデコからよく分からない体液を出しながら笑顔で「おかえりなさい」を言う妻に、後ずさりをしていた。

今日の密度の濃い出来事をダイジェストで話すと、亭主は速攻「明日は必ず皮膚科に行こうね」と、体液の駄々洩れのオデコから視線を外しながら言った。「でも、出費がなぁ」と言うと、「トイレのトラブル8000円出すのに、自分の顔面トラブルに金出せないって、あーた(あなた)は何を考えているんですか」と、亭主に詰め寄られた。実はこの数日前に、トイレのトラブルに遭遇してたから、自分の顔面がトイレと比べられ、トイレよりも軽いというのは何となく悲しくて、私は翌日の皮膚科行きを約束した。

その夜はとにかくオデコが痛かった。素人判断で勝手に薬を使って酷くなったら、卒業式がパーになるので、なるべく楽しいことを考えて気を紛らわせて寝てしまおうと見事な作戦を立てたが、娘の「地理のテスト36点」が突然、頭にひらめいてしまい「この馬鹿がどうして卒業できたんだろうか?」という疑問が新たに生まれて、結局はよく眠れなかった。

 

翌朝、かかりつけの皮膚科に行った。

まくらがえしが来ても、この程度の患者には病院も慣れているらしく、普通に「今日はどうされましたか?」と質問をされた。

もしも「足に湿疹ができて」とだけ言ったら、受付のお姉さんはどんな顔をしたのだろう?と思ったりしてた。

 

で、やはり「突発性まくらがえし」はアレルギー反応であろうとのことだった。「パーマ前、体調良くなかったんじゃ?」と言われ、私は何度も首を縦に振った。体調が優れないと、いつもの薬剤でもこんな反応が出てしまうこともあるそうだ。

美容院のお姉さんも、何度も「大丈夫?」「痛くないですか?」って訊いてくれていたのに。

「抗生物質の入った軟膏を出しますが、これ以上少しでも変化があれば、すぐに来てください。いいですね」と、かなり強く言われた。

 

考えてみれば「自己免疫疾患」やら「アレルギー性**」や「ストレス性**」なんて病気ばかりしている。多分もう、パーマも髪の毛を染めることもないだろう。この手の反応は二度目が怖いとも聞いたし。まぁ、今も白髪染めなどせず、グレーを楽しんでいる。亭主と白髪自慢をしながら「お前の白髪の生え方はみすぼらしいね。私の白髪こそ王道だ!」と言い合っていたので、今更、気にもならないか。

 

軟膏はかなり効きが良くて、まくらがえしは消えつつある。亭主曰く、「赤みが消えればただの“つるべ落とし”w」ってのが、少し気にかからないでもないが。

 

でも、実は皮膚科の先生は身振り手振りで話す私の両手を見て「両手と腕の湿疹も治療しないと、血が出てるでしょう」と言われて、こっちも薬を貰っていてかなり楽になった。

 

延々と書きなぐったけれど、要は調子が悪かったら予定を中止や延期にする勇気って、自分の身を守るためにも大切ってことを言いたかった。

体液は治まったが、その部分の皮がボロボロとはげ落ちてきて、今は違う意味で困った状況ではある。