7月から数えてついに先日、4回目の通夜葬儀参列。

亭主側の身内で90才超えの方で、息子・娘曰く「大往生ですから」と。

いつもならば亭主が有給取って一緒に車で駆けつけるけれど、この訃報の半月ほど前から、亭主は殺人的忙しさで、連日、深夜帰宅をしていた。更には休日でも電話が来て、仕事へ行く。

自分のおばなので通夜も葬儀も参列したいと言うが、時間がどうしても取れない。

 

 

見かねた私はヨシエ(亭主の母親・仮名)に電話をした。

「息子、今連チャン激務で、参列させたら次は間違いなく息子の葬儀出すことになるわ」

言葉は悪いけれど、決して冗談ではなかった。亭主の心身はそこまで疲弊していた。

代わりに私が通夜葬儀に参列して、手伝うことがあれば何でもするからと伝え、亭主と娘を前頭側頭型認知症の実母に預けることにして、私は身支度を始めた。

 

不在中の食事の事やら、あれこれを想定して用意をしていく。娘の体調不良時、一回目の薬・二回目服用の薬など小分けにしたりする。

 

葬儀はヨシエが住む街の寺で行われることとなり、その寺で通夜後、泊まることになった。

 

「寝泊まりする部屋の隣が納骨堂だけど、アンタ気にしない?」

 

ヨシエの問いかけに、ちょっとだけ言葉が詰まった。

「子供じゃないんだし……つーか、寺にお骨って当然だし、それは想定内だから大丈夫」

私の言葉にヨシエは安堵したよう溜息を吐いた。寺で結婚式を挙げた者としては、そのへんはあまり気にはしない。真顔

翌日朝、私は宿泊道具やら喪服を詰めた鞄を持って家を出た。娘には何度も「何かあれば電話でもラインでも送るように」と念を押した。

 

亭主の父方・母方共に何度もこうして高齢の身内を見送った。今回、ヨシエもいてくれるし、顔見知りの身内もいるから不安はなかった。

 

この時点でまでは。

 

ヨシエ宅に到着したが、何やらヨシエの顔色が悪い。いや、何かに怒っている風だった。と、言うかこの人のマジな怒りの表情を私はこの日、初めて見た。話を聞くと、遺族である息子・娘は家族葬として、こじんまりと静かに見送りたいと希望をしている旨をヨシエらに伝えたらしい。

 

ヨシエは夫方・自分方双方で冠婚葬祭の特に『葬儀部門』での活躍を期待されている人でもあり、機動力も嫁の私が見ていても驚くほど素晴らしいものがあった。葬儀屋や仕出し弁当に至るまで、この街の事情を熟知していて、いつでも葬儀ではヨシエは総監督的立場だし、身内の遺影の前では生き生きとして輝いていた。しかし、身内の息子・娘さんたちも決してヨシエを蔑ろにした訳ではない。ヨシエも義父も高齢であり、難病と呼ばれる病を抱えていて、そのような高齢身内への配慮の一環としての家族葬の申し出であったはずが、ヨシエにはそれがどうしても納得いかなかったようだ。

 

自ら「私も年取ったし」「もう、年だわ」と謙遜を込めての言葉と、他者からの「高齢だから静かにされては…」との配慮は答えは同じであっても、どうやらそこに行きつくまでの過程は全くかみ合わないものなのだと私は思った。これは特殊なことではない。ある家庭では、これが高齢者ドライバー問題だとか、様々な形でトラブっているのだろうなと思った。

「何でも今まではお母さんがやってきたけど、そろそろ次の世代で人材育成もしないと、みんなが困るよ。それにこのままお母さんに万が一があったとして、その後に葬儀があったら私たち、何をどうしていいのかわからなくて、納骨堂で安置されているお母さんの骨壺揺すって『どうすんのよっ!』って騒ぐかも」

と言うと、ヨシエの表情は幾分、和らいだかに見えた。

 

今までと違って、手伝いを必要とされない参列だけの葬儀は不謹慎ながら気楽だった。通夜まであと数時間を私はヨシエとヨシエの娘のヤスコ(亭主の妹・仮名)で世間話をしながら待った。そろそろ喪服に着替えようかと持参したバッグに手を掛けた時、ヨシエは「アンタはその荷物、ここに置いていきなさい」と言い放った。

「いや、私は通夜会場でもあるお寺に泊まるってことで…」

と、言いかけた言葉をヨシエは遮り言った。

「私、あの甥っ子や姪っ子嫌いになったし、あんな所にアンタを泊める訳にはいかないわ」

と鼻息を荒くした。元々、ヨシエも義父も持病のことがあり、今では市内での兄弟姉妹の通夜でも自宅のここへ戻り寝ることが当たり前になっていた。だから私にはここへ泊まれとヨシエは言う。まぁ私は亭主の名代として役目を果たせればいいので、実家に泊まることなど、別段、大ごとでもなかったので「うん」と返事をした。

「帰宅したら深夜だろうし、今から二階に布団を敷いて行こう」

とのヨシエの掛け声に私とヤスコは頷き二階へと上がった。

階段を上りながら私はあることを思い出した。

 

そうそう、これ。下矢印下矢印下矢印

『ヨシエと霊道』

https://ameblo.jp/g-hannibal/entry-11999446859.html

 

これってすごくヤバくない、自分??

 

つづく