突然ですが

 

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あまりの事に言葉も出せずにいる薫。
新藤は手にした杯をひと口で飲み干すと大きく息を吐く。

「もう25年も前の事だ…
 当時27歳だった私は憧れのSPになることが出来た。
 そして、様々な功績が認められ1係へ栄転したんだ。
 嬉しくてね、してきた努力が報われ形になった事が。
 全てが思いのままで順調だった。恐ろしいくらいにね。
 でも、そんな我が世の春も長くは続かなかった…」

新藤の閉じた瞼が小刻みに震えているのがわかる。
薫は息を呑み新藤を見つめる。

「あの…新藤係長。
 そんな大切な話をオレなんかに…
 その辛さ、今のオレなら理解出来ます。
 でも、誰だって何年経っても言いたくないこと、思い出したくもないことはあります。
 どうかこれ以上は…」

「気を使わせてしまったね、井上君。
 いいんだよ。語ること、これは先輩たる私の責務だと思っている。
 正直、こうして話すことが君に対して何かの役に立つのかさえ、私にはわからないんだ。
 でも、今の君を見ていたら、どうしても聴いて欲しくなったんだ。
 ほら、少し飲もう。私も飲むから。」

新藤が薫と自分のお猪口に酒を注ぐ。
少し照れたように笑うと、その注いだ酒も新藤はひと口で飲んだ。

「私の怪我、実は一切が公にされてはいないんだよ。
 自分の人生が大きく変わりさえしたと言うのに、その事実がなかった事になっているんだ。
 当時の総理の殺害計画があり、それを実行された。
 主犯は…総理の息子だったんだ。」

新藤は目を伏せ唇を噛む。

「若気の至りだったんだろうな。
 大学で右だ左だと声高に主張する連中に洗脳されて、自分の父親をこの国の未来のためにと
 本気で殺そうとしたんだよ。
 連中、特別な組織もなければ装備も準備もなかった。
 まぁ、それが幸いしたんだろうが。
 見よう見まねで作った爆発物片手に、父親の行動予定を分刻みで知っていた息子が…
 私は総理を押しどけ爆発物に覆いかぶさった。
 でもそれは私の腹の下を通り過ぎ膝で止まり爆発、足はこの様だ。
 『総理私邸でガス爆発、幸いな事に怪我人はなし』
 それが当時の公式発表だ。
 現職総理大臣の息子が爆弾テロなんて、公表出来るはずもないよな。
 私は救急車すら呼んでもらえず、ビニール袋に詰められたちぎれた自分の足を抱かされ
 公用車でもない夫人の私用車で病院へ運ばれたんだ。
 切断された足は着かなかった…
 今でも私はあの時の夢を見るよ。
 後部座席で震えながら自分の足を抱えていた姿の夢をね。」

 

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上矢印

これは、2012,11,12に私が本家サイトにupした話。

相変わらず斜め上の展開が好きな私は、部下に大怪我を負わせ足を切断した話を書いた。足を失いSPを続けることが出来なくなった部下は配置転換され、そこで新たに上司となった男から、思いもよらぬ過去の話を聞かされる訳だけど、それが上記。

自分が警護していた総理大臣のバカ息子が実父の総理を殺そうと爆発物を作り仕掛けたけれど、思うように爆発させられず総理付きSPが巻き添えを食って足を失ってしまう。

しかし、現役総理大臣の息子が実父にテロ行為なんて公に出来るはずもなく、その爆発は『首相官邸でガス爆発』と報道された。SPひとりが大きな巻き添えを食ったことなど無かったかのように……

 

 

実は今、最終回となったフジの『CRISIS公安機動捜査隊特捜班』を見ていたら、思わず首をかしげてしまう既視感に襲われた。

確かにドラマ自体はSPの原作と同じ金城さんな訳で、ドラマの至る所にSPを彷彿させる場面がいくつもあった。

けれど、既視感はそれだけじゃなかった。

 

“現職総理大臣のバカ息子が、実父相手に爆破テロを実行したけど失敗して。

その事件自体、表に出せないからガス爆発として公表して”

って4年以上前の斜め上の私の創作と同じ展開なのは何でなんだろう??

以前、他で同じようなことがあって、圧倒的に知名度があった先方がオリジナルで私が真似たような誤解を受けて以降、私は作品にupした日時を必ず記載するようにした。

これなら、どちらが先か一目瞭然だから揉めることもないし。

 

文句ではなく(二次の私が文句など言える立場ではない訳で・汗)、原作者と同じ感性だったことが妙におかしくて、金城ファンとしてはたまらない。

何だか不思議な気持ち。(笑)