インフルエンザかかったことある? ブログネタ:インフルエンザかかったことある?

何度かかかったけれど、一番酷かったのは20年近く前だった。真冬2月。亭主を仕事に出してひとりで熱に浮かされながら寝込んでいた。午後2時頃だった。吹雪の中、『ピンポーン!』と誰かが。でも、39度を軽く超えた状態で、頭を上げることすら困難で来たであろう誰かを放置して寝た。しかし……『ピンポーン!ピンポーン!!ピンポーン!!!』相手も吹雪の中、確固たる意志で玄関チャイムを鳴らし続ける。高熱でガンガンする頭に止まない玄関チャイムに音を上げた私は、実験で失敗した博士のようなパジャマと頭髪で玄関を開けた。吹雪の中、満面の笑みで立っていたのは亭主の妹夫婦だった。「小樽の市場で活きのいいイカを買って持ってきたよ!」妹夫婦は雪の中、笑顔を絶やさない。私は慌てて口元を押さえて「ごめんっ!今、インフルエンザで熱が下がらなくて寝ていたんだ。うつったら大変だから、すぐにここ閉めてっ!!!」妹夫婦は状況を知って箱いっぱいのイカを私に手渡すと、慌てて戸を閉めた。かなり無理してローンを組んで買った妹夫婦のスカイラインのエンジン音が次第に遠ざかる。私は泣いた。

毒母に頼る気はなかったので(帝王切開で子供産んで、予定よりも早く退院して即、ネコたちの待つ自分宅に戻って、直ぐに家事・育児・ネコの世話を開始したぐらいだった)高熱で幻覚幻聴のようなものと闘いながらもひとりで我慢していた。それでも別にいいと思っていた。けれども、吹雪の中、兄(亭主)と私のためにわざわざ燃費の良くないスカイラインで小樽からイカを運んでくれた妹夫婦の気持ちを思うと有り難くて有り難くて。高熱と有り難さと部屋の隅まで充満したイカ臭さで泣けた。「有り難いけど、こんな時にイカなんてどうすりゃいいんだよ!?」と本当に泣けた。泣きながらその夜、イカを焼いて醤油をつけて食べた。熱でクラクラしていたが美味しかった。

昨年のクリスマス頃、亭主の身内が亡くなり通夜の後の飲食時、その話をして笑った。「私の頭の中では今でも“アンタたち夫婦”=“イカ臭い”なんだわ」というと、亭主の妹の旦那は仏さんを背にして大笑いしていた。

実は今、娘から風邪を貰ってしまい、二人で寝込んでいる。座薬入れても熱が下がらない、二人で。で、こんな時に限ってこれから深夜に「仮面の忍者・赤影」と「カムイ外伝」放送すんのね、時代劇チャンネルで。残念だけど録画で我慢。

高熱で話がバラバラ飛ぶけど、気にしないでください。私も気にしていないので。(おいおい)

高熱のせいか、悪夢のようなものを見てた。色々とスカパーチャンネル並にかなり多彩な悪夢を見ていたが、最後に見たものが記憶に残った。夢見が悪くて嫌な汗の中、目が覚めた。夢、それはごく普通の我が家の風景だった。玄関で亭主が靴を履いていた。口の重い亭主が自分から喋り始めた。「オレ、しばらく家を出るから。たい焼き焼いて暮らすんだ」。頭の中で????が飛び交い言葉が出ないまま、亭主は家を出た。で、目が覚めた。離婚するにもちゃんと整理してから実行しろよと、目覚めて何だか腹が立った。早朝、私は自室で寝ている亭主の部屋へ押しかけ夢の話をしてから、「何のビジョンもなくたい焼きなんて焼いて暮らしが成り立つのか!?」と、詰め寄った。高熱と寝ぼけで私はおかしかったと今なら思える。でも、こんな理不尽な苦情に熟睡を妨げられた亭主も寝ぼけながら応戦する。「たい焼きははみ出たパリパリが美味しいんだよ、ねっ?」。高熱妻vs寝ぼけ亭主の不毛な会話はかなりの時間、かみ合うことはなかった。

ダメだ、今夜はもう寝よう。