鍵なくしたことある? ブログネタ:鍵なくしたことある? 参加中

あぁ、思い出す、思い出す。娘が生まれる気配もない頃の出来事。
その日は23日の土曜日。給料日は25日月曜で週末なのに、財布に紙のお金は入っていなかった。確か、知人が急な入院をしたり私の通院費で前日、無慈悲に金が飛んでいっていて、私と亭主はどんよりとした週末を過ごしていた。
「あっ!」
落ち込んでいた私は、笑顔になると立ち上がった。私が何かを思いつき笑顔になると、その横で大抵、亭主の顔は暗くなる。私の思い付きが亭主の幸せにつながらないと直感しているからだろう。
「そういえば銀行口座に5000円が残っているはずだ」
給料直前の5000円の存在は砂漠で三日ぶりに水を得たかのように嬉しく心躍るのもだった。某大型スーパー(そんな時に限って徒歩ではありえない、恐ろしいほど遠くのスーパーを選択してしまう)の前に銀行があるので、そこで金を下ろして買い物しちゃおう!と言うことになって、私は亭主と車で出かけた。
銀行に飛び込み記帳すると確かに口座には5000円残っていた。夫婦で防犯カメラの前で思わずピースをした。ATMから出てきた5000円は私たちを、幸せな気分にしてくれた。
さぁ、車を目の前の大型スーパーに移動させて、この5000円で夢と希望を買い漁るぞ!いざゆかん!!いざ、ん?ほら、行くんだよっ!亭主の顔色が微妙に青と白の中間色になっていた。
「かーちゃん、車のキーのスペア、持ってたよね?」
確かに運転出来ないが、自宅や車のキーだけはいつも必ず持っている。しかし、まさにこの日に限って私は5000円に心を奪われキーすべてを自宅に置いてきてたのだ。
「鍵、忘れてきたけどいいよね?」
車内での会話を思い出した亭主が、ガミラス人のような顔色で確認の意味を込めてもう一度、私に問う。
「持ってなかったって、こんな腹の立つことでも大切なことなら二度も言わせるのかよっ!」
デスラーの野望は波動砲によって一気に砕かれた。

携帯など普及される遥か前。
私と亭主は公衆電話を探して、備え付けの電話帳で鍵を開けてくれる業者さんを探した。電話するたびに確実に10円玉が減っていく。胃も頭も痛くなってくる。こんな時に限って、なかなか来てくれる業者さんは見つからなかった。そして、70円目を投入した時、やっと30分以内で行きますよと快諾してくれる業者さんが見つかった。イスカンダル星が見つかった瞬間だった。
業者さんは特別な工具で1分もせずにロックされた車を開けてくれた。スターシャがコスモクリーナーDを手渡してくれた瞬間の喜びを私たち夫婦は得た。自分の車にもかかわらず。

「それでは、5000円いただきます」
「……」
地球を目前に生き残ったデスラー艦に攻撃を受けたほどの衝撃だった。やっとの思いで手にした5000円はまさに右から左へと、ATMから業者さんの手へと渡った。

ヤマトはボロボロになりながらも何とか地球に帰還したが、その後もめ事は絶えることはなかったという。
ん?何の話だっけ??