リコーダー吹きなら知らない人はいないんじゃないか、くらい有名な曲。市販譜もいっぱいあるし、作るまでもないと思うんですが、自分で校訂をしてみたくなりました。
 原譜はデューベン・コレクションの筆写譜です。a,b2組のパート・セットがあります。aセットには1667、bセットには1669.4.15.の日付が記入されています。bセットのほうははっきり筆写年月日と分かりますが、aセットのほうは作曲年か筆写年かはっきりしません(ウプサラ大学では筆写年としています)。

 二つのセットの大きな違いは次の通りです。
パート名 … aセットはFlaut.1~Flaut.7 Organon、bセットは1,2がCant.1 Cant.2nd 3-6はパート名がなく別人の補記、7はBassus 通奏低音はBasso Continou(s)となっている。
タブ・スコア … bセットに付いている。aセットにはなし。
数字 … aセットのOrganonには付いているがbセットにはない。
Fl4の音部記号 … aセットはアルト記号、bセットはメゾソプラノ記号
誤記 … aセットにある2箇所の誤記(b.27:Fl4:4,b.87:Fl1:3)がbセットでは正しく書かれている。

 以上の状況から音符は誤記のないbセットを採用しました。パート譜とタブ譜間の相違はタブ譜を優先しています。aセットからはすっきりまとまっているパート名と数字を頂戴しました。
 残った問題は88小節Fl4の最後の音。全部一致してg音なのですが、これだとf-gがFl1と平行8度になってしまいます。音が込み入っているのでそのままでも気にならないかもしれませんが、居心地が良くないので最も妥当と思われるd音にしてみました。
 もう一つ。曲の末尾には反復記号が書かれていません。最後の音はフェルマータを付けた終止音です。aセットではロンガになっているので一層明確です。となると第3部は繰り返さなくてもよいことになります。他ともつりあいで反復して構わないのですが、原譜を尊重して譜面には反復記号を付けておりません。
 音部記号はbセットに従ってFl4をメゾソプラノ記号にしました。総譜は元の記号のままですが、Fl3-6のパート譜は現代版も作りました。