以前作成した時に疑問があった箇所について今回シフラで確認した結果、修正が必要になったことが一番の理由です。序でに調性も原調に戻しました。
問題の箇所は90-97小節です。バルセロナ版では90小節目の上に「3」と書き込んで全体が3連符と見なしています。ですが、拍子記号はCなのに拍数は3拍しかないことになるし、3連符だという指示も書かれていません。バスには全音符まで登場します。こうした矛盾や不備が放置されているのは校訂者の迷いを反映しているかもしれません。
今回、シフラを見て更に確認されたことがあります。バルセロナ版90小節は拍子記号をCとして付点2分音符+4分音符になっており、小節の上に2分音符と4分音符が書かれています。つまり元は3拍子だったかのようになっています。ところが、シフラでは2分音符にはっきりと付点が付いています。バルセロナ版は元の音価と異なる音価を用いてもそれを注記したりしていません。この曲の60小節以下も半分の音価の3/2にしていますが何も注はありません。ここの異例でしかも間違った付記は不可解です。そしてもう一つ、91小節目の上に書かれている「3」、なんとこれはシフラにはありませんでした! つまり90-91小節に態々書き込まれている付記は間違ったものとなかったものな訳です。校訂報告が付いていないので推測に過ぎませんが、この曲にはシフラに存在しないキエブロが括弧付けで相当数書き込まれているところを見るとどうやら異版の写本があるようです。校訂者がこんな逸脱行為をするとは思えないのでそんなところではないかと思います。
結果的にここの箇所で3拍子なり3連符を匂わせていたのは付記だけでした。シフラは単にCの指示があるだけですからここは4/4拍子で解釈しなければなりません。
では校訂者がややこしいことをした原因はどこにあるかというとシフラの音価指示とタイ記号の解釈にありました。1小節分(ここはどの声部も同一なので一つでかまいませんので)の書き方は次の通りです。
4分音符+8分音符+4分音符+タイ記号+8分音符+4分音符
音価を単純に足すと4/4になります。ならば、なんでタイ記号があるのか? バルセロナ版は直前の音符を付点4分音符にしてあります。これはタイ記号の上に8分音符が書かれていない限り無理です。誤植と判断したのかもしれませんが、3拍子系にしたいための処理なので所詮無駄です。
普通は各声部独立して動きますから全声部にタイ記号がある例は極稀です。調べたところ、昨日UPした第6旋法第3番に112,149小節の2拍目、274,280,283小節の3拍目、計5箇所ありました。始めの二つは前の音に倍全音符、次の音に全音符が書かれています。拍子は3/1(シフラには3/2の指示がありますが、音価のほうは3/1です)ですのでタイ記号の音価はゼロです。後の三つの場合、Presa全体に277小節3拍目の2分音符指示があるだけですが、前の音符二つが2分音符なのでタイ記号も2分音符分の音価を持っているのは間違いありません。
つまり、タイ記号には音価がある時とない時があるのです。後者の場合、そこに拍があることを示しているだけです。
では、問題の箇所はどちらなのか。ここで注目したいのが93小節目バスの休符指示です。小節の最初の位置と問題のタイ記号と同位置の2箇所に書かれています。ここのバスは最後の4分音符から参加するのでそれまでの付点4分音符分の休符が書かれているのです。その一つがタイ記号の位置にあるとすれば、ここが3拍目だということになります。繰り返しますが、この箇所はC(4/4)の指示があるところですから他の位置に置くことはないのです。従ってこの休符と同位置にあるタイ記号も3拍目に当たると決まります。そこから前後の拍を逆算するとタイ記号の音価はゼロ、つまり拍を指示するのみと結論がでます。音価の合計が4/4なんですから答えは最初から判っていたんですけどね。
私が最初に作った版の該当箇所は無効になりましたので修理するなり廃棄するなりしてもかまわないのですが、解釈に苦しんだ思い出もありますので記念に残しておきます。使用には耐えられないのでご注意を。
http://aeolianconsort.chakin.com/Arauxo.htm#Segundo_Tiento_de_Quarto_Tono
問題の箇所は90-97小節です。バルセロナ版では90小節目の上に「3」と書き込んで全体が3連符と見なしています。ですが、拍子記号はCなのに拍数は3拍しかないことになるし、3連符だという指示も書かれていません。バスには全音符まで登場します。こうした矛盾や不備が放置されているのは校訂者の迷いを反映しているかもしれません。
今回、シフラを見て更に確認されたことがあります。バルセロナ版90小節は拍子記号をCとして付点2分音符+4分音符になっており、小節の上に2分音符と4分音符が書かれています。つまり元は3拍子だったかのようになっています。ところが、シフラでは2分音符にはっきりと付点が付いています。バルセロナ版は元の音価と異なる音価を用いてもそれを注記したりしていません。この曲の60小節以下も半分の音価の3/2にしていますが何も注はありません。ここの異例でしかも間違った付記は不可解です。そしてもう一つ、91小節目の上に書かれている「3」、なんとこれはシフラにはありませんでした! つまり90-91小節に態々書き込まれている付記は間違ったものとなかったものな訳です。校訂報告が付いていないので推測に過ぎませんが、この曲にはシフラに存在しないキエブロが括弧付けで相当数書き込まれているところを見るとどうやら異版の写本があるようです。校訂者がこんな逸脱行為をするとは思えないのでそんなところではないかと思います。
結果的にここの箇所で3拍子なり3連符を匂わせていたのは付記だけでした。シフラは単にCの指示があるだけですからここは4/4拍子で解釈しなければなりません。
では校訂者がややこしいことをした原因はどこにあるかというとシフラの音価指示とタイ記号の解釈にありました。1小節分(ここはどの声部も同一なので一つでかまいませんので)の書き方は次の通りです。
4分音符+8分音符+4分音符+タイ記号+8分音符+4分音符
音価を単純に足すと4/4になります。ならば、なんでタイ記号があるのか? バルセロナ版は直前の音符を付点4分音符にしてあります。これはタイ記号の上に8分音符が書かれていない限り無理です。誤植と判断したのかもしれませんが、3拍子系にしたいための処理なので所詮無駄です。
普通は各声部独立して動きますから全声部にタイ記号がある例は極稀です。調べたところ、昨日UPした第6旋法第3番に112,149小節の2拍目、274,280,283小節の3拍目、計5箇所ありました。始めの二つは前の音に倍全音符、次の音に全音符が書かれています。拍子は3/1(シフラには3/2の指示がありますが、音価のほうは3/1です)ですのでタイ記号の音価はゼロです。後の三つの場合、Presa全体に277小節3拍目の2分音符指示があるだけですが、前の音符二つが2分音符なのでタイ記号も2分音符分の音価を持っているのは間違いありません。
つまり、タイ記号には音価がある時とない時があるのです。後者の場合、そこに拍があることを示しているだけです。
では、問題の箇所はどちらなのか。ここで注目したいのが93小節目バスの休符指示です。小節の最初の位置と問題のタイ記号と同位置の2箇所に書かれています。ここのバスは最後の4分音符から参加するのでそれまでの付点4分音符分の休符が書かれているのです。その一つがタイ記号の位置にあるとすれば、ここが3拍目だということになります。繰り返しますが、この箇所はC(4/4)の指示があるところですから他の位置に置くことはないのです。従ってこの休符と同位置にあるタイ記号も3拍目に当たると決まります。そこから前後の拍を逆算するとタイ記号の音価はゼロ、つまり拍を指示するのみと結論がでます。音価の合計が4/4なんですから答えは最初から判っていたんですけどね。
私が最初に作った版の該当箇所は無効になりましたので修理するなり廃棄するなりしてもかまわないのですが、解釈に苦しんだ思い出もありますので記念に残しておきます。使用には耐えられないのでご注意を。
http://aeolianconsort.chakin.com/Arauxo.htm#Segundo_Tiento_de_Quarto_Tono