9-12番の4曲は冒頭から各声部が異なる主題を提示して始まる独特な形式を持っています。フーガの一種と見なすかどうか微妙なところでしょう。フーガに含めるなら多重フーガではなく複主題フーガとでも呼ぶ他ないと思います。バッティフェルリ以外ですとフレスコバルディの作例しか知りません。

第9番 4声に対して主題が三つなので最後の声部の入りはどれか一つ重複することになります。この曲では第1主題が2回出る形です。以下、各主題とも複雑に絡み合いながら展開します。

1-14小節 主題提示部 各声部が三つの主題を一回ずつ提示します。
15-16小節 第2主題ストレッタ部
17-26小節 三重フーガ部
27-29小節 経過部
30-36小節 第2・第3主題の交互展開部
37-39小節 第1主題ストレッタ部
40-46小節 第1・第3主題の二重フーガの前後に第2主題が置かれて三つに分けられます。

第10番 4声に対して4つの主題が出るので各声部が異なる主題を提示して始まります。終盤に新たな副主題も登場します。

1-33小節 ここまでが主題提示部と見なせます。各主題はほとんど重なることなく一つずつ登場します。
34-46小節 ストレッタ部 各主題をストレッタの形で再提示します。
36-50小節 副主題部
51-56小節 3度ストレッタ部 各主題が2声の3度重ねで順に登場します。
57-64小節 四重フーガ部 副主題も伴って2回同じ形で登場します。