RC30×Z8=フリーダム | 角目好き

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四角いライトいかがです?

平日に休みを取り、五月晴れの奥多摩に走りに出かけた。モヤモヤする5月特有の気分をぶっ飛ばしたいのと、新調したメッツラーZ8インタラクトは、果たして使えるタイヤなのかを見極めたかった。

 

普段より1時間半早起きした。下り方面はガラガラだったが、時間が経つと共に上り方面は数珠つながりとなった。手を振りながら通り過ぎていった数台のツーリング集団がいた。V4の加速音をプレゼントした。ショートに振ったがまだギア比の高いRC30は、ゼロ発進でクラッチをなかなか離せず、発進時に独特の音階を刻む。加速に応じて変わる音色は、まさに管楽器。何度聞いても飽きることはない。

 

さて、このモノホンレーサーに、ツーリングタイヤを履かせて良かったのだろうか?意識をタイヤに集中させ、西に伸びる一直線の大通りを走り続けた。

 

暫くして、Z8は明らかに乗り心地がいいことに気がついた。いままで色々なメーカーの、ハイグリップからツーリングタイヤまでを履いてきたが、乗り心地という評価軸は持っていなかった。せいぜいゴムが柔らいとか固いとかいったものだ。ちなみに空気圧はF2.2、R2.7。リヤのサイズは160/60R18。

 

出発して1時間。青梅公会堂は解体中だった。ここを超えると山道が続く。ピッチングを気持ち大きく感じたので7-11に入り、リヤ伸びを締め込んでみた。3クリックで止まってしまい、もうこれ以上は締められない。とうとうオーリンズのOHは待ったなしとなってしまった。

 

しかしリヤ伸びの3クリックは、リヤに腰高感を出し、ピッチングを収めてくれた。そして直進安定性が際立ち、ハンドリングにメリハリがうまれた。

 

それまで履いていたα13は、レーンチェンジの際わずかな入力で小気味よく反応したが、Z8は同じようには反応してはくれなかった。まるで重たいホイールを履いているかのような鈍さがあった。やっぱりツーリングタイヤなんだなあとあきらめかけていたのだが、リア伸び3クリックで、これは行けるかもしれないぞという予感が私の中に沸き起こってきた。

 

 

周遊につながる国道はガラガラだった。オイル交換によってエンジンは静かになり振動が減った。HRCイグナイター、輸出用エアクリBOX、モリワキエキパイ、ヘキサゴンサイレンサー。セッティングは完璧で、吹け上がり方は10年乗っても恐ろしい。RCに気になるところは皆無で、タイヤに意識を集中し続けた。

 

α13の反応の速さはコーナリング中ではかえって気を使うもので、体を大きくオフセットさせてもらえなかった。変な角度に腰をセットした日には、旋回性に影響が出た。路面からの影響も受けやすく、いつでも車体を抑えられる体勢が求められた。路面とライダーの間に薄く納まり、まさにレーシングライクな特性だった。

 

一方Z8はスピードとバンク角に合わせた弧を分厚く描いてくれる。コーナリング中にも乗り心地の良さが感じられ、体を大きく使っても路面の対応をタイヤに任せきることが出来る。倒し込みの速さ、切り返しの速さ、姿勢変化による旋回性のコントロールはα13には及ばないが、Z8には安心感に包まれた絶大なグリップ力があり、ベタ寝かしは大得意で、際立つ直進安定性同様に、きれいな弧を描いてくれる。

 

 

このセットしたら勝手に曲がっていく感覚と圧倒的なグリップ感は何かに似ている。バリオキャンバーのGSボードだ。ただし、ボードでは肉体を鍛え上げ、様々な下準備をし、リフト券を買い、バーンの条件が揃った時だけに、極上のカービングターンが味わえる。25°の斜度、凍ったフラットな斜面、重力加速度をアクセルに時速70km、バンク角70°、回転半径25mという設計通りの弧を、2秒に1回描くリズムを要求される。

 

それがRC30+Z8なら、温かい日差しの中、V4という音楽を聞きながら、家を出て2時間でゆっくりバンクに入り、膝が接地したらバンク角を止めて寝かし続け、ゆっくりとアクセルを開けて切り返す。というリズムでいい。同じスピードだとしても大きな弧で、とてもリラックスできる。

 

セットしたら自動操縦になるZ8がとても気に入った。30年前のレーシングマシンからは、自律こそが自由の本質というメッセージを、いつも受け止めてきたが、Z8にしたらそんな厳しさではなく、俺に任せておけ的な懐の深さを感じるようになった。マシンの上で好きなように体を動かせられる。α13では得られなかったフリーダムを、年をくってしまった私は感じることになった。

 

進化したレーシングボードのような安心感を得て、遠征することもなく、奥多摩からまっすぐに帰宅した。昼下がりの上り車線には、ゆったりした時間が流れていた。