東京エレクトロン、中計達成「時期遅れる可能性も」 成長投資は緩めず

 

顧客の投資見直しや中国での半導体製造装置の販売減速などを背景に、2026年3月期は期初予想から一転、最終減益を見込む

27年3月期までに掲げる業績目標の達成時期も遅れる可能性が出ている。中長期で人工知能(AI)半導体の需要が拡大するとの見方は変えず、成長投資の手は緩めない。

将来の「1兆ドル(約147兆円)の半導体デバイス市場への成長に向けては順調。米中の関税政策などを注視し、前工程向け装置(WFE)市場の動向を見極めていく」とした。

一方、27年3月期までの現中期経営計画の目標については「WFEの動向により達成時期が多少遅れる可能性もある」と述べた。26年3月期の世界のWFE市場は前期から5%縮小すると見込んでいる。

 

 

来期は売上高3兆円以上、売上高営業利益率35%以上、自己資本利益率(ROE)30%以上を掲げるものの、売上高と営業利益率の進捗が遅れている。市場予想でも来期の売上高は2兆6101億円営業利益率は27%と目標を下回る。

背景には複数の要因がある。まず中国での装置販売減速だ。利益率の高い中国向けの売上高比率は今期は30%台半ばと前期の42%から下がり収益を圧迫する。長期記憶に使われるNAND型フラッシュメモリーの投資抑制も響く。スマートフォンやパソコンの需要低迷でNANDの需給が緩み採算を意識したメーカーが生産を抑えているという。

次が先端ロジック半導体を手がける顧客の投資計画の修正だ。「26年1〜3月期に装置需要が増えるとみていたが遅れている」(川本氏)。最先端分野は技術面で量産が難しく、台湾積体電路製造(TSMC)など一部を除き苦戦しているようだ。

川本氏は「27年3月期後半に出るとみられるAIサーバー向けの半導体需要は伸びるが、個々の顧客の状況で短期的に落ち込みが出るのは否定できない」と話した。

 

さらにAIのデータ高速処理に不可欠な広帯域メモリー(HBM)の投資計画の見直しが重荷になる。現在は次世代品となる「HBM4」への移行期に当たり、生産技術や歩留まりが改善したメーカーが一時的に製造装置の購入を絞っている。ほかに、メモリーの一種で一時記憶に用いるDRAMの投資遅れも響く。

川本氏は、今期の業績の落ち込みは一時的といい、数年先の中長期動向については成長が続くとの見方を示す。「日本で売上高3兆円を超える規模で営業利益率が35%以上ある上場企業はほぼいない。新製品を展開するなどして、同計画を達成したい」と強調した。

 

成長投資は続ける。AI半導体の需要拡大に備え、今期の研究開発費は2950億円とし、売上高研究開発費比率は過去10年で最高の12.6%を見込む。川本氏は「同比率は競合も高い。成長期待の大きいエッチングや成膜分野を中心に投資を続け、シェアを拡大したい」と話した。