2025/12/3
造船業が熱い!
トランプ政権のMAGA政策に日本が協力する一環として、さらには日本国自身の国力増強の一つとして、造船業復活への期待が高まっています。
それに呼応する形で、造船大手や重工、海運業界などでも連携の強化を始めました。
日本の造船業界で現在進行している「企業間連携による国際競争力強化」と「政府主導による基盤強化・環境対応」の2つの軸について学んでゆきます。
日本の造船共同体・再編の2つの軸
| 軸 |
目的 |
主な主体 |
成果の例 |
| I. 企業間連携による競争力強化 |
コスト削減と規模の追求。中韓勢に対抗し、世界の造船市場でのシェアを確保する |
主要な民間造船企業グループ (今治造船、JMU、名村造船所など) |
日本シップヤード
MILES共同体 |
| II. 官民連携による国家課題対応 |
安全保障と脱炭素。国の基盤を支える生産能力の維持と、次世代技術の開発 |
政府・省庁(国土交通省、経産省)+ 産業界全体 |
造船業再生基金
|
軸 I:企業間連携による競争力強化
これは、個別の企業がグループ化・提携することで、コスト競争力を高め、設計・生産を効率化する動きです。
1.今治造船とJMUの資本業務提携(合弁会社:日本シップヤード/NSY)
目的 両社の商船事業における国際競争力を強化し、中国・韓国の巨大造船グループ
に対抗する ※今治造船(51%出資)、JMU(49%出資)
計画 ・NSYがLNG船を除く一般商船バラ積み船、タンカー、コンテナ船など)の
営業と設計を一元化
・仕様を統一し、マスプロダクト(量産効果)を追求
・設計に基づき、それぞれの工場で建造を分担
利点 国内最大の造船連合となり、汎用船の量産体制獲得と、JMUが持つ大型・高付
加価値船の技術を融合させたオールジャパン体制の核
2.MILESの設立
「MILES」はMarine-design Initiative for Leading Edge Solution(最先端ソリューションのための海事設計創造企業)の略で、元々は三菱重工と今治造船の合弁会社
(MI LNG)が社名変更した企業です。
3. MILESに連合する共同体(グリーン化・次世代技術の開発)

目的 カーボンニュートラルの2050年目標達成に向けたゼロエミッション船の設計・
技術開発を加速
「技術開発」と「設計標準化」、環境規制対応という国際的な課題解決に焦点を
当て、日本の造船業界が直面する二大課題(国際競争と環境・安全保障)を
克服するための戦略的な動きとなる
計画 ・グリーンイノベーション基金(GI基金)などの資金提供を活用し、企業が単
独では困難なリスクの高い技術開発を一斉に進める
液化CO2輸送船やアンモニア燃料船の標準設計スキームを構築し、
開発コストを低減
・MILESが設計と技術標準化を担い、舶用メーカーが新燃料対応エンジンを、
海運会社が運航ノウハウを提供し、次世代船の実用化を目指
・エナジートランジション、スマート化、サイバーセキュリティなどの最先端
技術の取り込み
参画企業 MILES(三菱重工と今治造船)、JMU、日本シップヤード(今治造船、JMU)
+海運大手(日本郵船、商船三井、川崎汽船)
国(官) NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)などを通じて、研究開発
資金を投入し、リスクを取ったイノベーションを促進します
軸 II:官民連携による国家課題対応
この枠組みの最大の目的は、地政学的リスクや国際競争の激化によって、日本の海運・防衛を支える造船・船舶部品の国内供給が途絶するリスクを防ぐことです。
特に、船の骨格である「船体」そのものを経済安全保障推進法の特定重要物資に指定し、国が国内の生産体制維持を支援することで、海上輸送に不可欠な基盤を守ろうとしています。政府の総合経済対策でも、造船業再生を後押しする基金の創設などが検討されています。
1. 造船業再生基金(安全保障・国内基盤強化)
目的 経済安全保障の観点から、有事にも耐えうる国内での船舶・部品の安定供給
体制を確立し、国内造船能力の維持・回復。
国際的なサプライチェーン途絶リスクへの対応、および海上輸送に不可欠な
船体の国内供給体制を強靭化すること
官民投資総額:1兆円 (政府と造船業界が各約3,500億円 政府系金融機関が財政投融資を通じて3,000億円出資)
計画 基金による巨額の財政支援(設備投資への補助・融資)
「船体」や「舶用エンジン」などの特定重要物資の安定供給を確保
2035年までに建造量を2倍に引き上げるなど、生産能力の拡大を目標とする
対象 ・国内の造船所(JMU、内海造船、名村造船所など)
・船舶エンジンメーカー(ジャパンエンジン、ダイハツインフィニなど)
・船用機器メーカー(古野電気、寺崎電気産業など)
利点 企業は支援を受け、老朽設備の改築やデジタル化を進め、国内生産能力を
維持・拡大できる
おまけ 大手造船業の撤退
現在最大手の今治造船やJMUは上場しておらず、投資対象に悩む方もいるかもしれません。実は過去に大手造船の事業撤退が続いていたのです。
- 日立造船(現 カナデビア):2002年に撤退
- 佐世保重工:2014年に上場廃止
- 三菱重工:2010〜2022年に段階的撤退
- 三井造船(現 三井E&S):2021〜2025年にかけて撤退
なんだか、切ないですね。島国日本で造船が世界ナンバーワンでないのは。
政府が過去に支援を怠ったために中韓にお株を奪われてしまった「半導体」「造船」の復活が実現できるでしょうか?
正直なところ、アメリカの協力は限定的とみるべきでしょうし(搾取の方が上回る)、世界的潮流に乗って日本独自に強靭な道を歩みだす機会だと思います。
投資家の皆さんもそんな日本にこそ投資しましょう!Happy Trading !!