昨日、三月十一日。
一昨年までは何のための日でもなかったこの日が、今年からは特別な日になってしまった。
あの日、跡形もなく波に押し流されてしまった街。灰塵に帰した建物。人が住めなくなったエリア。。。
しかし、みんなの心をひとつに結べば、夢は消えはしない。
If we hold on together...
彼女は埼玉で生まれた。
東京の大学を卒業して就職し、そして富山にある支社へと配属され、そこで二年の日々を過ごした。
その間、仲間ととある居酒屋のカウンターにたまに来て座っては明るいお酒を飲み、大いに語らい、そしてよく食べた。
この店の出汁巻き卵と茶わん蒸しが大好きだと言ってくれた、彼女。。。
一昨年の春に、今度は博多へと転属になり、わざわざその挨拶にも来てくれた。
「寂しくなるわね」と、そうつぶやいた女将さんの一言に、目を真っ赤にしながらこうべを垂れていた。。。
彼女が、もうこの世にいないと皆が知ったのは、去年の暮れも押し迫った頃のことだった。
彼女の勤め先の忘年会があって、そこにやって来た、当時彼女と一緒にいつも来ていた同僚のA君が、重い口を開いたのだった。
信じられなかった。
A君は、そのことがあって、店には顔を出せなかったのだと申し訳なさそうにしていたが、彼はもちろん何も悪くない。
運命の悪戯。
やるせなさだけが、それぞれの胸に残った。
あの日、出張で石巻を訪れていた彼女。
曲り道の向こうに消えた人。
なぜこの道は、曲がっているのだろうか。。。
『Missing You~追憶の涙』。この曲を亡くなった彼女に捧げます。