米国メイン州ポートランドに拠点を置く、非営利団体のニュースウェブサイトCommon Dreamsに昨日、「The US-Israel Hybrid War Against Iran(米国とイスラエルによるイランへのハイブリッド戦争)」が掲載された。国連事務総長の呼びかけで2012年に設立されたSDSN(持続可能な開発ソリューション・ネットワーク)の中東政策と持続可能な開発の専門家兼アドバイザーであるシビル・ファレスSybil Faresによる、コロンビア大学教授であり、同大学持続可能開発センター所長、国連持続可能な開発ソリューション・ネットワークの代表、国連ブロードバンド開発委員会の委員も務めるジェフリー・D・サックスJeffrey D. Sachs教授へのインタビューの中のサックス教授の発言部分を載せている。

 

ハイブリッド戦争戦術を理解することは、トランプのレトリックが戦争の脅威と偽りの和平提案の間でなぜこれほど急激に揺れ動くのかを説明する助けとなる。

 

問題は、米国とイスラエルがイランを攻撃するかどうかではなく、いつ攻撃するかである。核時代において、米国は全面戦争を控えている。なぜなら、それは容易に核エスカレーションにつながるからだ。代わりに、米国とイスラエルは、壊滅的な経済制裁、標的を絞った軍事攻撃、サイバー戦争、不安の煽動、そして執拗な偽情報キャンペーンを組み合わせた形でイランに対して戦争を仕掛けている。この複合戦略は「ハイブリッド戦争」と呼ばれる。

米国とイスラエルのディープステートはハイブリッド戦争に依存している。CIA、モサド、同盟国の軍事請負業者、治安機関が連携し、リビア、ソマリア、スーダン、パレスチナ、レバノン、シリア、イラク、イラン、イエメンに及ぶ一連のハイブリッド戦争を通じて、アフリカと中東全域に混乱を煽って来た。

衝撃的な事実は、四半世紀以上にわたり、米国とイスラエルの軍隊及び情報機関が数億人の地域を荒廃させ、経済発展を阻害し、恐怖と大規模な難民移動を生み出し、混沌そのもの以外に何の成果も上げていないことだ。安全も平和も、安定した親米・親イスラエル同盟も存在せず、ただ苦しみだけが残っている。この過程で米国は、自らが第二次世界大戦後に創設した国連憲章をも意図的に貶めようとしている。国連憲章は、ハイブリッド戦争が国際法の根幹を侵害することを明確に規定している。国際法は、国家が他国に対する武力行使を控えるよう求めているのだ。

ハイブリッド戦争の受益者はただ一つ、米国とイスラエルの軍産デジタル複合体である。パランティアなどの企業がAI支援型暗殺アルゴリズムで利益を得ている。ドワイト・アイゼンハワー大統領は1961年の退任演説で、軍産複合体が社会にもたらす深刻な危険性を警告した。その警告は彼の想像以上に現実のものとなった。今やAI、大衆プロパガンダ、そして無謀な米国外交政策によって強化されているのだ。

ここ数週間、ベネズエラとイランで二つのハイブリッド戦争が同時に進行している。いずれもCIAの長年にわたる計画が最近エスカレートしたものであり、さらなる混乱を招くだろう。

ハイブリッド戦争の受益者はただ一つ、それは米国とイスラエルの軍事産業デジタル複合体である…

米国は長年、ベネズエラに対して二つの目標を掲げて来た。オリノコベルトに広がるベネズエラの膨大な石油埋蔵量を掌握すること、そして1999年から政権を握る左派政権を打倒することである。米国によるベネズエラへのハイブリッド戦争は2002年に遡る。当時CIAはウゴ・チャベス大統領に対するクーデター未遂を支援した。これが失敗すると、米国は経済制裁、ベネズエラのドル準備金の没収、石油生産を麻痺させる措置(実際に生産は崩壊した)など、他のハイブリッド手段を強化した。しかし米国が撒いた混乱にもかかわらず、ハイブリッド戦争は政府を倒すことは出来なかった。

トランプは現在、カラカスへの爆撃、ニコラス・マドゥロ大統領の拉致、ベネズエラ産原油の略奪、継続的な海上封鎖へとエスカレートしている。これは当然ながら継続的な戦争行為である。またトランプは、ベネズエラの石油資産の掌握を狙う強力な親シオニスト系選挙資金提供者を、この手段で富ませている可能性が高い。シオニスト勢力はベネズエラ政府の転覆にも狙いを定めている。同政府は長年パレスチナ問題を支援し、イランと緊密な関係を維持して来たからだ。ネタニヤフは米国のベネズエラ攻撃を「完璧な作戦」と称賛している。

米国とイスラエルは、イランに対する継続的なハイブリッド戦争を同時にエスカレートさせている。米国とイスラエルによる継続的な破壊工作、空爆、標的型暗殺が予想される。ベネズエラとの違いは、イランに対するハイブリッド戦争が容易に壊滅的な地域戦争、さらには世界大戦へとエスカレートし得る点だ。実際、地域の米国同盟国、特に湾岸諸国でさえ、トランプ大統領に軍事行動を回避するよう説得するため、集中的な外交努力を続けている。

イランに対する戦争は、ベネズエラに対する戦争よりもさらに長い歴史を持つ。米国がイランに深刻な問題を引き起こし始めたのは1953年、民主的に選出されたモサデク首相が当時のアングロ・イラン石油会社(現在のBP)に反旗を翻し、イランの石油を国有化した時である。CIAとMI6は「アジャックス作戦」を指揮し、プロパガンダ、街頭暴力、政治的干渉を組み合わせてモサデクを転覆させた。CIAはシャーを擁立し、1979年まで支援を続けた。

シャーの統治下で、CIAは監視・検閲・投獄・拷問によって反対意見を抑圧した悪名高い秘密警察サヴァークの創設を支援した。この弾圧は最終的に革命を招き、ホメイニ師を権力の座に押し上げた。革命の最中、米国がシャーの医療治療のためテヘランに送り込んだ際、学生たちが米国人人質を拘束。米国がシャーを権力に復帰させようとするのではないかという懸念が生じた。この人質事件は米イラン関係をさらに悪化させた。1981年以降、米国はイランを苦しめ、可能ならば政権を転覆させる計画を練って来た。米国が実行した無数のハイブリッド作戦の中でも、1980年代にはイラクに資金を提供してイランとの戦争を仕掛け、数十万人の死者を出す結果となったが、政権転覆には失敗した。

米国とイスラエルのイランに対する目的は、核計画を制限しつつイランの国際システムにおける立場を正常化する交渉による解決とは正反対である。真の目的は、イランを経済的に疲弊させ、外交的に追い詰め、内部から圧力をかけ続けることにある。トランプは、イランの原子力活動を監視しつつ米国の経済制裁を解除するはずだった2016年の包括的共同行動計画(JCPOA)からの離脱を皮切りに、平和につながる可能性があった交渉を繰り返し妨害して来た。

ハイブリッド戦争戦術を理解することは、トランプのレトリックが戦争の脅威と偽りの和平提案の間でなぜこれほど急激に揺れ動くのかを説明する助けとなる。ハイブリッド戦争は、米国の意図における矛盾、曖昧さ、そして露骨な欺瞞によって繁栄する。昨年夏、米国は2025年6月15日にイランとの交渉を予定していたが、交渉の2日前となる6月13日にイスラエルによるイラン空爆を支持した。このため、ここ数日の緊張緩和の兆候を表面的に受け取るべきではない。これらは、近い将来に直接的な軍事攻撃が容易に続く可能性があるのだ。

世界にとっての唯一の望みは、米国とイスラエルを除く国連加盟191カ国が、ついに米国のハイブリッド戦争への依存にノーと言うことだ。体制変更作戦にノー、一方的な制裁にノー、ドルの武器化にノー、国連憲章の否定にノーと言うことだ。米国国民は自国政府の無法行為を支持していないが、その反対の声を届けるのは非常に困難だ。彼らと世界のほぼ全ての国々は、手遅れになる前に米国のディープステートによる残虐行為を終わらせたいと願っている。
 

オオバン