昨日、米国The Alternative World掲載、「Post-Iran war: The end of an era, not to decline, but as a trigger to abrupt change(イラン戦争後:時代の終焉――衰退ではなく、急激な変化の引き金として)」。同じ日のロシア、The Strategic Culture Foundation掲載記事より転載。執筆は、英国諜報機関(MI6)と欧州連合外交の両方で要職を務めた元英国外交官であり、ベイルートに拠点を置く紛争フォーラムの創設者兼ディレクターのアラステア・クルックAlastair Crooke。
トランプによる石油、関税、テクノロジーへの締め付けは裏目に出た――その結果、自給自足経済と世代間の対立という新たな時代が幕を開けた。
マイケル・ハドソン教授は最近の討論で、今日「米国の覇権の衰退」を語る人々に異議を唱えている。ハドソン教授によれば、「衰退」という言葉は何かが上下することを意味するが、それは常に回復するものだ。「しかし、統計的に見て『サイクル』などというものは存在したことがない……衰退などない、それは崩壊なのだ」——
「我々が目撃しているのは、衰退ではなく、ある時代の終焉、つまり急激な変化だ。そしてこの変化は外部から生じたものではない。米国の力の終焉は、いかなる外国の内戦や、米国の覇権に対する他の戦争の結果でもなかった。その終焉は、覇権国としての自国の利益を、他のあらゆる国の利益と対立させようとした米国自身によってもたらされたのだ」。
皮肉なことに、ハドソン教授は次のように述べている。
「米国の『衰退』を回避するためにとられたあらゆる措置が、かえってそれを招く仕組みとなってしまった。米国は支配力を再確立するために戦争に踏み切ったが、もはや支配し得ないことを自ら証明してしまった……イランを屈服させるために40年にわたる『最大限の圧力』を仕掛けたが、その代わりに、今や[米国の支配に立ち向かっている]まさにその敵を育て上げてしまったのだ」。
ハドソン教授によれば、米国の権力を維持するため、トランプ大統領は「石油を支配することで――なぜなら誰もがそれを必要としているからだ――」世界経済全体に一連のボトルネックを課そうとしたという。
しかし、トランプがイランやロシアと対立し、中国に対する締め付けを試みたという事実自体は、米国の権力維持戦略の全容を構成するものではない。その戦略はより広範なものである。だが、石油はその主要な側面の一つであり、それと密接に関連するドルの覇権もまた同様である。トランプは明らかに、米国がエネルギーへのアクセス権を持つ者を決定し(すなわち、イラン、ロシア、キューバではない)、競争力を抑制するためにエネルギー供給を締め上げられる対象(すなわち中国)を特定出来るよう、世界的なエネルギー支配を強化しようとしている。
一方、ロシアのような燃料供給国に対しては、ロシアの石油やガスが供給される相手を制限しようと、制裁が課されている。帝国主義大国の従属国(すなわち欧州)は、驚くほど快く米国のエネルギー締め付けの執行役を務めているようだ。それにより、欧州はそれ自体、制裁を乱発する主体へと変貌を遂げている。
(石油支配とは別に)米国が世界の他の経済圏に対して締め付けを確立しようとする試みの他の側面は、第一に、 関税政策である。トランプはこれを通じて、経済に打撃を与える関税という脅威を用い、従順な国家に対し、ワシントンへの忠誠を誓わせ、米国の政策方針に黙認させ、そして米国が必要とする原材料を供給させることを望んでいた。その見返りとして、ワシントンの「インサイダー・ネットワーク」(米国の従属国)への参加を認めるというものである。
実質的に、ワシントンには2つの「インサイダー・ネットワーク」が存在する。1つはトランプ、その家族、および広範なビジネスパートナーから成るネットワークであり、もう1つはトランプの海外における後援者(湾岸諸国など)によるネットワークである。
関税政策とは、実質的に「米国主導の『ネットワーク』への参加に同意しない限り、関税やエネルギー供給の締め付け、あるいは金融締め付けを用いて、貴国の経済に混乱をもたらす」と、婉曲に伝える手段に他ならない。
しかし、関税政策もエネルギー締め付け政策も、決して順調に進んで来たわけではない。とりわけ、イランがこれに従うことを拒否し、中国やその他のイランの同盟国への石油供給を続けていることが大きな要因だ。
そこで、この締め付け政策の新たな「足場」となるのが、「パックス・シリカ(Pax Silica)」構想である。アルノー・ベルトランは、トランプ政権が「その『シンジケート』としての目的を明確に打ち出した」と説明している。
「各国は参加し、サプライチェーンをワシントンに整合させ、中国を締め出す(中国は『非市場的慣行』や『不公正なダンピング』を行う国々として、婉曲に表現される)――その見返りとして、帝国的な技術エコシステムへのアクセス権を得るのだ」。
「誤解を招かないよう、このイニシアチブの立案者であり、パランティア出身の元社員であるジェイコブ・ヘルバーグ国務次官補は、次のように明確に述べている。『「コンピューティング能力とそれを支える鉱物資源』を掌握する者が21世紀を支配する』と。そして彼は、それを実現するために、ワシントンを中心に『新たな経済安全保障のコンセンサス』の下で『志を同じくする』国々のグループを結成したいと考えている」。
したがって、トランプの「米国を再び偉大に(Make America Great Again)」という戦いは、世界的な影響を及ぼすことになる。世界は単に以前の状態に戻ることは出来ない。ウォール街や「市場」は、それが起こり得る、いや必然であるかのように信じているようだが(彼らはそれ以外の未来を想像出来ないのだ)、世界の他の地域は、化石燃料や肥料、その他の関連製品こそが世界を「動かしている」要素であるからこそ、イラン戦争を新時代への構造的転換の始まりと見なしている。
イラン戦争は、米国が食料、石油、肥料、そして米国がボトルネックを作り出し、武器化出来るほぼあらゆるものにおける対外貿易を武器化することから自国を守るために、各国が(少なくとも)食料の自給自足が必要であるという認識を、世界中でさらに強めることになるだろう。これは、世界銀行が提唱する「輸出主導型」かつ債務に依存したモデルとは対照的に、循環型で自給自足的な経済への回帰を意味する。
ロシアのMGIMO大学教授であり、元SVR(対外情報局)諜報員のアンドレイ・ベズルコフは、2026年6月3日に開催されたサンクトペテルブルク・フォーラムにおいて、変化する世界が抱える課題について具体的に言及した。同氏はロシアの状況を踏まえて発言したものの、その指摘は世界全体に通じるものである。
ローラ・ルーが要約した彼の演説の中で、ベズルコフは、ロシアが西側諸国との新たな長期にわたる世界的な対立局面に入ったと主張した。彼によれば、この対立は戦争の本質における根本的な転換を表しており、当面の間、ロシアの政策と社会を決定づけることになるという。
「ベズルコフは、現在の(軍事的)闘争は、主に領土の奪取を目的としたものではないと強調した。彼は、領土の奪取は従来の価値の多くを失ったと述べた。その代わりに、これはインフラ、指揮網、技術、宇宙資産、生物学的セキュリティ、情報領域といった重要システムを弱体化させることに焦点を当てた消耗戦である……『この戦争における西側の戦略は非常に単純だ。すなわち、彼らが敗者となる核衝突を我々と避けることだ。したがって、彼らはカエルを弱火で煮るように、徐々に追い詰めてくる』」。
「彼は、ロシアは今後長年にわたり、おそらく20年から30年にわたって戦争状態が続くと覚悟すべきだと警告した。この期間中、ロシアは経済発展を続けつつ、戦争という現実と共存する術を学ばなければならない」。
「彼の演説の中心的なテーマは、ロシアの現在の対応に対する厳しい批判だった。ベズルコフは、同国が敵対勢力に対してあまりにも寛大すぎると主張した――「我々は動きが遅い。我々は(敵に)許しすぎている。彼らは我々を恐れていない……なぜなら、我々が口にしていた数多くの『一線』が、紙の上だけのものにとどまっているからだ」」。
「この新たな現実に適応するため、ベズルコフは国家と経済の抜本的な再構築を求めた。彼は、開発と長期的な防衛の両方を追求出来る二重目的のシステムの構築を強く求めた。データセンター、石油貯蔵施設、通信ハブなどの重要インフラは、地下に埋設するか、原子力発電所と同等の基準で保護されなければならない。また、彼は軍と民間社会の間の隔たりを埋める必要性と、より断固とした政策を採用する必要性を強調した。ロシアは平時の状態への早期復帰を期待することは出来ず、したがって、社会、経済、戦略をそれに応じて再編成しなければならない」。
ベズルコフの演説は、その口調と、ロシアが世代にわたる対立の時代に心理的・構造的に適応すべきだと訴えた点で大きな注目を集めている。このテーマは、セルゲイ・カラガノフ教授によってすでに詳しく論じられている。
これら二つの論考が示すのは、衰退しつつある米国の覇権が示す攻撃的な姿勢を受けて、自らを再構築しようとしている変化する世界であり、米国による関税、エネルギー、技術、そしてドルを通じた世界への攻撃から自国の経済をいかに守りつつ、同時にイラン戦争が先駆けとなった非対称的な地政学的戦争という新時代に適応すべきか、その道を探っている姿である。
ハドソン教授は次のように結論づけている。
「イランは、自らの未来を切り開く能力を否定しようとする者たちに対し、自らの生き方を守るために戦っている。この戦いの本質はそこにある。そして、これは究極的には道徳的な戦いであり、それが経済的な戦い、貿易的な戦いへと転化され、こうした[世界的な]分裂を招いているのだ」。
この道徳的かつ文明的な在り方と、過激なトランプ流の米国的物質主義の虚無ととの対立こそが、おそらく我々の時代の内戦や世界的な紛争を特徴づけることになるだろう。
ヒルガオ
