今日のビル・トッテン氏訳、「The Big Flaw in Trump’s AI plan (トランプAI計画の大きな欠陥)」。15日のYouTibe、Search Partyより。
なぜトランプは中国のAIを支援するのか?
ほんの数年前まで、米国はAI競争の最前線を独走していた。しかし今日、中国はほぼ毎週のように注目すべき成果を出している。7月、驚くべきことにトランプ政権は中国による先端チップの購入を容認し、これにより中国はさらに躍進した。中国はなぜこれほど急速に進歩しているのか?トランプはなぜ中国を支援するのか?米国は世界で最も重要な技術競争における優位性を失いつつあるのだろうか?
コンテナの中に入っているのはH20 という非常に重要なコンピュータチップで、これは米国の Nvidia 社によって設計され、台湾で製造され、中国のテクノロジー企業に販売されていた。2025年、中国は約130万個のH20を入手する予定だったが、突然トランプ大統領がこれを阻止した。なぜか?H20はAIを動かすからだ。現在、米国と中国はAIの支配権を争う全面戦争状態にある。勝者は、相手よりも強力な経済力と軍事力を手に入れるだろう。トランプは中国にそのような優位性をもたらすつもりはなかった。しかし、その3か月後トランプはNvidiaのCEO、ジェンセン・フアンと夕食を共にし、そのわずか数日後、Nvidiaは先進的なH20チップの中国への販売を再開すると発表したのだ。
「一度中国で禁止されたNvidiaのH20チップが再び市場に戻る。ジェンセン・フアンはワシントンと北京の両方を巧みに操り、勝利を収めた」
トランプのAIチップに関する方針転換は衝撃的だった。
「人々が合意できることがあるとすれば、それは最先端のAI技術が中国に渡ってはならないということだろう」
そして、それは重大な結果を招きかねない。
「この政策を誤れば中国が米国を追い越す可能性は十分にある」
ではなぜトランプはNvidiaチップに関する方針を変えたのか。そして中国がそれを手に入れたら何が起きるのか?
AI競争を自動車レースに例えてみよう。米国と中国はそれぞれ最高のAIつまりレーシングカーを建造している。両国はAI研究に資金を投入し、データセンターを建設し、AI企業を支援している。現時点では中国の車が速いかもしれない。だがレーシングカーの性能はエンジン次第だ。AIのエンジンはコンピュータチップである。シリコンの小さな板に数十億個のトランジスタが詰め込まれ、電気信号をオンオフする。数十万個のチップを束ねればAIモデルの訓練と実行に必要な演算能力が生まれる。中国のファーウェイやカンブリコンはかなり優れたAIチップを製造しているが、NvidiaやAMDなどの米国チップメーカーははるかに優れた製品を作っている。優れたチップこそが2010年代に米国AIが優位を築けた理由だ。しかし米国チップメーカーが中国にもチップを販売したため中国は大きく遅れを取らずに済んだ。
2018年頃、米国政府はAI競争の重要性を考慮すれば、中国を支援するのを止めるべきだと気付いた。 AI技術は急速に進歩している。軍事的にも戦略的にも極めて重要な存在になりつつある。
クリス・マクガイアはトランプ政権とバイデン政権の両方でAIチップ政策に携わった。
「ハードウェア分野こそ我々が中国に対し圧倒的優位を保つ唯一の領域だ。だから中国の進歩を遅らせたいならこれが唯一の手段となる」
2020年、トランプは中国製チップメーカーに対し米国製製造装置の使用を禁止した。さらに2022年、バイデンは米国チップメーカーが最先端チップを中国に販売することを違法とした。新チップが登場するたびに、米国のAI技術は飛躍的に進歩した。一方、中国のAIは旧式の米国製チップか、劣った中国製チップに縛られたままだった。これらの規制が効力を発揮する年数が増えるほど中国の遅れは拡大していく。そして今、差が開き始めている。
こうした輸出規制と呼ばれる制限はゲームを変える。しかし米国半導体メーカーに多くの潜在的なビジネス機会を犠牲にさせる。特に最先端チップメーカーであるNvidiaにとって。15年前、Nvidiaはビデオゲーム用チップを設計していた。その時、研究者たちがNvidiaチップがAIモデルの駆動にも最適だと発見した。この発見がNvidiaにAIブームへの先行優位をもたらした。2023年までに、AIデータセンター用チップの90%以上をNvidiaが供給するに至った。
「世界はNvidiaチップを使いたいと思っている。なぜなら、他のチップを使うよりNvidiaを使う方がはるかに簡単だからだ」。グレゴリー・アレンはAI政策を研究している。「中国の製造施設で作られている最高のチップはNvidiaのチップより約5年遅れている。実際、中国の軍事文書を見るとAI関連ではNvidiaチップを要求している」
バイデン政権の規制前、Nvidiaの収益の22%は中国へのチップ販売が占めていた。しかし規制後は13%に落ち込み、これらの規制はビジネスに打撃を与えた。そこでNvidiaは規制を回避する天才的な方法を見つけた。
AIチップは性能と相互接続速度で評価される。これは他チップとの通信速度を指す。2022年、バイデン政権はこれらの制限値を超えるチップの中国への販売を禁止した。Nvidiaの最先端チップも対象に含まれていた。そこでNvidiaはH100チップの性能を落とし、制限値を下回るH800を開発した。中国のAI企業は可能な限りこれを購入した。その後バイデン政権が規制を強化するとNvidiaは新たなチップH20を設計した。性能は高くなかったが処理速度が非常に速く、何百万ものユーザーにAIモデルを提供するのに理想的だった。中国のAI企業は再び可能な限り購入し、密輸さえ行われた。2025年までに、主にNvidiaチップのおかげで、中国は驚異的な進歩を見せ始めた。
Deepseekはこうして生まれた。DeepseekはNvidiaのH800を採用した。
「彼らは急速に追い上げているので一瞬たりとも油断できない」。中国市場はこれらのチップを可能な限り速く買い漁っている。「購入が許可される最高のNvidiaチップなら、それが欲しい」と彼らは言った。
2025年4月、米国はトランプ政権下で再びH20の輸出を阻止した。しかしNvidiaのCEOは新チップ開発ではなく、新たな主張をトランプに提示し、トランプはこれを認めた。「トランプ大統領が本当に望んでいる政策は、アメリカがAI競争で勝つことだ」トランプ政権とNvidiaは主に二つの主張を展開している。なぜ中国にチップを売るべきか。一つはそれが莫大な利益を生むからだ。そして米国政府はその500億ドルの一部を獲得する機会がある。輸出にも国庫にもよいのである。実際、トランプが禁輸措置を撤回した時、Nvidia株は史上最高値を更新した。トランプの政策は、チップ売上の15%を米国政府が徴収するというものだった。これにより政府は数十億ドルの収入を得られる可能性がある。しかし二つ目の主張はどうだろうか。「中国に十分な量を提供すれば、中国の開発者はアメリカの技術スタックに依存するようになる」というものだ。
もしNvidia H20が最高のチップなら、中国のAI企業は国産チップよりこれを買うだろう。国産チップを買わなければ、中国メーカーは高性能チップの開発に苦戦する。米国が優れたチップで中国を引き離せば、最終的に中国のAIは米国製チップを使い続けるしかない。中国は米国製チップに依存し、米国のAI技術が進歩するにつれ、中国を常に数歩遅れさせ続けられる。これは確かな計画に思えた。
「これは完全に狂った話ではない。米国は中国AI企業を支援するが、中国半導体企業には打撃を与える。これが基本方針だ」
しかし多くの専門家が指摘する問題点があった。
トランプの計画では、中国政府は中国のチップメーカーを後れを取らせたまま放置するだろうと想定したことだ。 そんなことが起こるはずがない。中国政府は数十億ドルをチップメーカーに投入し、AI企業に対し中国製チップを50%使用するよう義務付けたのだ。さらに習近平は、AI分野での最終的な自給自足を要求した。だから、
「中国は最終的に目標を達成するだろう。Nvidiaのチップほど高性能ではないが、現在の実用不可能な状態から最低限使えるレベルには到達する。その閾値を越えた時点で中国はNvidiaから離脱する。必然だ」
これがトランプ計画の欠陥だった。トランプは中国を米国製チップに依存させようとしていない。中国のチップメーカーが追いつくまでNvidiaチップの使用を許容し、競争に留まらせている。H20は米国チップが不要になる未来への架け橋なのだ。中国がそこに到達すれば、米国に迫るか、同等になると多くの専門家は見ている。
「これが中国の戦略だ。米国は彼らの戦略実行を助けるべきではない。それは米国の国家安全保障上の利益に反する」
それでもトランプはNvidiaが中国にさらに高性能なチップを販売することを検討している。
「Nvidiaのブラックウェルは超絶に先進的だ」
ブラックウェルはH20の12倍の性能かつ11倍の速度を持つ。中国が米国を容易に追い抜き追い越すことを許すことになる。それは十分あり得ると思う。
現在トランプと中国は貿易協定を交渉中だが、中国はブラックウェルチップの獲得を狙っているようだ。中国政府はAI企業に対しNvidiaチップの購入を禁止し、中国製チップはH20と同等だと称している。
これは中国政府がAI企業に国産チップ使用を強制している可能性もあるし、Nvidiaに圧力をかけトランプ政権にブラックウェル販売を許可させる手段かもしれない。もしトランプが折れれば中国のAI技術は急速に高度化するだろう。
「もし米国とほぼ同時期に、米国モデルと同等かそれ以上の性能を持つモデルが登場し始めたら、それは米国の計算能力優位が失われた証拠だ」。 AI競争において決定的な局面だ。
米国の今この瞬間の決断が、競争の行方を、おそらく勝者を左右するだろう。
ムラサキシキブ
