米国大統領の仕掛けた貿易戦争が拡大している。メディアは中国との貿易戦争を報じるが、大統領の仕掛ける貿易戦争は中国に限らない。日本や欧州、米国の隣のカナダやメキシコにも仕掛けている。大統領は大統領選挙で製造業を復活し、労働者に職を回復さることを公約に掲げた。安い製品が米国に輸入されたことで、米国の製造業が衰退した。大統領は米国に輸入される物に関税をかけることで、米国内での価格が高くなるため、米国で生産されたものも価格で競争可能となると考えたのだろう。しかし、米国の製造業はすでにかなり疲弊していて、輸入品に関税をかけることで、復活出来る製造業も限られる。しかも関税は輸入品の多種に渡るため、国内の物価をあげてしまう。物価が上がれば、労働者の実質賃金は低下する。大統領を選挙で支持した層にとっては喜べない。限られた製造業が仮に復活し、利益を上げられても、その企業の労働者の賃金は少し遅れてからでなければ上昇してこない。国内のほとんどの国民にとっては、実質賃金の低下でしかない。しかし、米国と言う国は、何にしろ戦いが好きな国だ。武力にしろ、経済にしろ「戦い」は大衆受けする国だ。例えそれが結果的に国にとってマイナスであってもだ。メディアが報じる中国にとって、貿易戦争はさほど圧迫するものではない。中国はこの10年の間、毎年国内総生産GDPに占める輸出の割合を減らし続けて来た。2007年には輸出はGDPの35%を占めていたが、10年後の昨年は18.5%まで下げている。しかも、米国への輸出比率は中国の全輸出の18%でしかない。仮に米国への輸出量が減っても、中国にとっての代替市場は他にも存在するし、また、そちらへの代替がむしろ加速されるだろう。東南アジアは経済の伸びがあり、アフリカや中南米への進出もこれまで以上に活発になるだろう。また、かっての日本がそうして来たように、中国は今、生産拠点を海外に移すようになっている。今では中国の賃金より、メキシコの賃金の方が安いため、白物家電では2010年にすでに世界一の座に就いた中国のハイアールは生産拠点をメキシコにも移している。欧米ではかえって、大統領の仕掛ける貿易戦争により、米国の国債の最大の保有国である中国が、報復として、その国債を売り浴びせるのでは、との憶測が生まれている。過去15年間、中国は日本とともに米国債の最大の保有国であり続けて来た。米国債市場は15兆7000億ドルの規模があり、中国の保有米国債は1兆1800億ドルである。核保有国同士の核戦争は互いを壊滅的な破滅に導くが、この国債の大量売却もそれと似たところがある。売る側も売られる側も双方が傷付く。双方が大きな損失を抱えることになる。それを覚悟での国債売却となるので、中国は容易には、そんな手段には出ないだろう。米国の関税に対抗して、中国が自国通貨である人民元を切り下げるとの見方も米国にはあるが、昨日、中国の天津で行われた世界経済フォーラムが主催する夏季ダボス会議で、中国の首相は「人民元の為替レートは中国の意図的な措置ではない。人民元の下げは害のほうが大きい」と述べている。米国大統領は最近の人民元の低下を中国による意図的なものだと批判したが、中国は意図的なものではなく、今後も意図的に切り下げをやる意志はないと表明している。最近のドルに対する人民元の低下は、むしろ米国が原因である。米国の金利上昇、通貨回収でトルコに始まり、新興国でドルが引き上げられ、それらの国の通貨がこぞって低下した。人民元もこの流れで低下しただけである。歴史的にも、現在の世界の経済状況からしても、貿易戦争はどの国にも益はない。米国大統領は、それを知っていても、11月の中間選挙のために、「戦い」を仕掛けているだけだろう。
職場の駐車場のそばの山にまた1頭の若い雄鹿が来ていた