日本銀行の黒田東彦総裁は国際決済銀行(BIS)総裁会議に出席するため、スイスを訪れているが、昨日、チューリヒ大学で講演し、「マクロ的な需給ギャップが着実に改善していくなか、企業の賃金・価格設定スタンスは次第に積極化してくる」、「実際に価格引き上げの動きが拡がれば人々のインフレ予想も着実に上昇していく」とし、「こうした前向きの動きが途切れることがないよう、今後とも強力な金融緩和を粘り強く続けていく」と述べている。また、同じ日、欧州中央銀行(ECB)のコンスタンシオ副総裁も「われわれはまだ責務を果たしていない。従って、非常に緩和的な金融政策を続け、成長を支援し賃金・物価の上昇を促す必要がある」と述べている。金融緩和は金利を下げたり、通貨の流通量を増やしたりすることだ。日本では1990年代初めのバブル崩壊後の2001年から日本銀行がこの金融緩和を開始した。そして、2012年末の第二次安倍政権発足後の2013年4月からは「異次元」の金融緩和に突入する。超低金利と、大量の通貨発行である。米国の中央銀行FRBも2008年のリーマンショック後、2014年まで金融緩和を行なっており、EUではECBが2015年から開始している。いずれも表向きには市中に大量の通貨を流し込むことで、デフレから脱して、2%と言うわずかなインフレを目指すとする。しかし、実際には大量の通貨は市中には流れ込まず、日米欧共に2%のインフレは達成出来ていない。実態経済が良ければ、市中銀行を通じて、企業の投資資金や消費者の長期ローンが増加し、消費も活発に行われ、インフレが生じるはずである。企業も個人も将来への経済的な不安があるため、投資や消費、借り入れを増やそうとはしない。そのため、溢れる通貨は資産のあるところへ流れ、株式や債券、不動産などの資産価格だけを高騰させている。何よりも賃金が増えない構造が最も重要な原因だ。賃金が増えなければ、個人は消費を増やさず、企業も設備の拡大はしない。当然、市中銀行からの借り入れも増加しない。大量発行された通貨は市中へは流れない。賃金が増加しない構造の中で、では何故中央銀行は金融緩和、超低金利と大量の通貨発行を続けるのか。現在、財務大臣である麻生太郎氏は野党であった2010年に、「800兆円の国の借金、満期になったら政府の権限でお金を刷って返せばいい」と発言している。これがまさに金融緩和の目的であり、現在、日本銀行は買い手の狭まった国債を買い取り、政府負担を軽減するために超低金利を続けている。今、日本銀行が国債の買取を中止すれば、国債は売れ残り、国債の価格は暴落し、国債の金利は高騰する。裏付けなく、ただ印刷されるだけの「円」の信用は、国債への信用でもある。その国債が暴落すれば、日本の通貨「円」もたちまち暴落し、まさにハイパーインフレとなる。日本銀行は金融緩和、実質的には国債の買取や株式を支えるための株式ETFの購入を続けざるを得ないのだ。ただ、それをいつまでもは当然続けられない。長く続ければ、それだけで諸外国から「円」への信用を失い、円の為替は暴落するからだ。また、株式が暴落しても日本銀行は債務超過になり、これも円の暴落に繋がる。米国や欧州も内容の多少の違いはあれ、事情は似たようなものだ。ともかく、日本の政府債務はそこまで追い込まれている。5年以内には、円はまさに紙くずになるだろう。他国で経済危機が起きても、連鎖して日本へも波及するため、株の暴落が起きる。そうなれば、円の暴落は早まるだろう。日本銀行が国債を買い入れることは政府を安易にし、政府債務を増加させることに繋がりやすいため、財政法で禁じている。官僚は姑息にも日本銀行が「直接」ではなく、「間接」に、一度市中銀行や保険会社が買い入れた国債を買い取ることで、クリアー出来ると考えたのだろう。財政法が案じるように、現政権は政府債務、借金を増やし続けている。最後は全て国民が犠牲にされる。マイナンバー制度や国外財産調書制度などは戦後の財産税の布石でもある。同じく預金封鎖も想定されているだろう。これを第二の敗戦と言った人もいる。