岩手に来てから最初は沿岸部を中心に見て回った。それが終わると、花巻以北に足を伸ばした。その合間には秋田県の武家屋敷のある角館や田沢湖へも出かけた。南の平泉や猊鼻渓や厳美渓にも何度かは出かけたが、北上周辺を見て回ることがなかった。今年に入り、その北上周辺を何度か回った。秋田の平野ほどではないが、それなりの広さがあり、場所によっては北海道を思わせる景観のところもある。そうしたところを車で走っているとつくづく岩手が広いと改めて思ってしまう。山野ではもう山藤も終わり、桐の花が残っているが、空木(うつぎ)類が咲いて来た。遠野だとまだライラックの咲いているのを見かける。広い岩手は場所によって1年を通して気温も異なるため、花の咲く時期も違って来る。また同じ花でも年によって微妙に咲き方も変わって来る。今、我が家の庭では山芍薬と玉沙参(たましゃじん)が咲き、大山蓮華の白い蕾が膨らんで来ている。家にいても出かけても、つい植物に目が行ってしまう。岩手には大きな都市がないが、それが幸いして自然の豊かさがそのまま残されている。東北の他県でもほぼ同じだろう。釜石市は人口が3.5万人で市街地の南北を山で挟まれているので、先日も職場の裏山でニホンカモシカを見ることが出来たし、今日もウグイスの声を近くで聴くことが出来た。北上市は人口が9万人だが、その北上市も少し郊外へ行くともう路上でタヌキが轢かれていたりする。先日久しぶりに祝い事で東京へ出かけたが、東京の周辺部の変わりように驚かされた。と同時に早く岩手に帰りたくなった。若い頃に東京や大阪にも住んだが、もう緑の見えない環境ではとても住めなくなってしまった。偶然にやって来た東北だが、住んでみると自然が、かって子供の頃に過ごした四国以上にとても豊かであり、山菜なども種類が多く、とても美味しい。釜石へやって来た当初は夏がとても涼しく感じられたが、その後身体が気温になれたのか、今では釜石の夏さえ暑く感じるようになってしまった。もう東京以南の夏には耐えられないだろう。北海道の夏の涼しさが恋しくなるが、かと言って、あの冬の寒さにはやはりもう耐えられそうにはない。ともかく、緑豊かな東北はその緑が人も動物なのだと言うことを常に思い出させてくれる。
菖蒲(あやめ)