朝愛染山は雲に隠れていた。あまり天候は良くないのかと思っていたが、青空が次第に広がり、最高気温は26度まで上がった。しかし、とても清々しい風が吹き、気温ほどには暑さを感じなかった。甲子川のオオヨシキリの甲高い声を聞くと、暑い夏を連想するが、一方で今日も職場の裏山で鳴くウグイスの声に夏から引き戻される。 厚生労働省が今月2日に発表した4月の毎月勤労統計調査の速報値では実質賃金の指数は前年同月比で0.1%上昇と発表されたが、18日発表の確報値では逆に実質賃金は前年同月比0.1%減となり、24カ月連続で減少となった。確報では、賃金水準の低いパート労働者のデータが反映されたためだ。総務省が先月29日発表した4月の2人以上世帯の家計調査では、1世帯当たりの消費支出は30万480円で、物価変動を除いた実質で前年同月比1.3%減で、家計消費支出は消費税増税が実施された昨年4月以降、13カ月連続のマイナスとなった。また、総務省が5月29日発表した4月の全国消費者物価指数は生鮮食品を除いて、前年同月比0.3%上昇し、23カ月連続の上昇となった。原油価格も3月頃までは1バレル50ドル前後であったが、4月初旬頃より再び上昇し始め、5月初め以降は60ドル前後で推移している。こうした指標を見る限りは実体経済がとても回復しているとは考えられない。一般の暮らしは年を追って、悪化している。そもそも企業自体が本来の業務で利益を得られていない。一部の輸出大企業が政府による円安と株高の助けを借りて、史上最高の利益を上げたが、とても自力では利益を上げられないために、さらに政府に労働コストの低下をもたらす政策を頼み込んだ。本年4月8日、ロイター通信は「日本の製造業は、なぜ設備投資に慎重なのか」と題するレポートを出した。日本の企業(3月期決算の上場企業)の手元資金は87兆円にもなるにもかかわらず、円高と需要減少が今後また起こる懸念があるため、企業が大規模な設備投資を行う環境にはないと言う。今月19日、働く人を交代させれば企業が派遣労働者を使い続けられる労働者派遣法改正案が衆議院で可決された。しかも、この法案に対抗して野党が出した同一労働・同一賃金推進法案が与党の修正により、実質的には意味のない法案となって可決された。派遣社員と正社員の待遇の「均等の実現を図る」と言う当初案が「均等な待遇および均衡のとれた待遇」に修正されて可決した。野党の結束を崩して、維新の党が与党の修正案に応じたためだ。こうした労働をめぐる法案の助けによって大企業は労働コストを下げられる道が開けた。製品の研究・企画で売れる新商品を作り出すことで製造業が利益を生み出すのが、本来の姿であるが、今の経営者はそうした努力を投げ出して、安易な目先の利益を得る方法を政府に頼った。これらの事態がすでに日本の大企業にもはや競争力が維持できないことを表している。少子高齢化による労働力の減少と言う、戦後日本が経験したことない未来がやって来る。政府に頼らなければ利益を出せなくなった産業をいくら保護しても経済は回復することはない。企業が本来の姿勢を投げ出しているからだ。政府も競争力を失った既存産業の保護のために莫大な国費を注ぎ込んでいる。新しい産業の育成にこそ注ぎ込まなければならない国費をだ。こうしたことがまかり通るのは政官財の三者が国や国民のことを考えるより、自己の利益だけを考え、国の指導者としての気質をなくしてしまったからだ。今後企業や個人のレベルでの格差はますます拡大していくだろう。そして格差のある社会は必ず経済効率は低下する。斜陽産業を保護するような日本は国そのものが斜陽化せざるを得ないだろう。税収も増加しないため国の債務残高も増加の一途を辿らざるを得なくなる。「戦争」ではなく「経済」で日本は壊滅的な打撃を受けるように思われる。


クモキリソウ