釜石では雲がなくすっきりと晴れ上がると空が青紫に見える。小高い山の色付いた木々とその空が何とも言えず感動させてくれる。じっと見ていて飽きることがない。いつも行く食堂からそうした眺めが見られ、ずっとそこに座っていたくなる。昔娘だった方々が結構多く来られているがその人たちの話し声を耳にしながら窓の外を眺めているのが最近気持ちよく感じられるようになった。岩手の言葉は関東とは異なり、柔らかく、むしろ関西に近い。若者はどこへ言ってもだんだん方言が少なくなって来ているが食堂に来ている人たちくらいになるとほとんどが岩手の方言そのままだ。故郷の愛媛でも地域によって少し言葉が違うが岩手でも同じようだ。ただ外から来たものにはその違いは分からない。いずれもともかく柔らかく聞こえる。釜石へ来てしばらくして気付いたことだが老若男女を問わずありがとうと言う時、ありがとうございまーすと言って、との音が強調されるアクセントが関西と同じなのだがほとんど必ずございまーすが付けられている。聞いていて気持ちがいい。スーパーのレジのところなどでも聞くことがある。料理にしても関東とは違いやはり関西風で大部分が薄味なのだ。その代表が麺類の出汁だ。どれも薄味が基本でラーメンでもうどんでも蕎麦でもみんな出汁を飲むことが出来る。東京に住んでいた頃はあの赤出しに閉口した。これは料理ではないとまで思った。母が大阪生まれの大阪育ちであったことも影響しているだろうが愛媛自体が西日本の文化圏のため基本的に薄味なのだ。岩手をかって治めた南部氏が山梨から来ていることを思うと何故アクセントや料理が関西風なのか不思議なのだが。南部氏に嫁いだ京の公家の娘たちがいたからだけなのか。料理では釜石は特に味噌と醤油を醸造している藤勇醸造(株)があり、ここの富士醤油がいい味を出してくれる。一度使うと手放せない。関西で育った身には釜石は言葉も風景も味もひどく馴染みやすい。

晴れた日の銀杏は黄色く輝き眩しいくらいだ