コロナ禍の中、なぜ人は「感染対策優先派」と「経済優先派」に割れるのか?

なぜ、ある人にとって問題ないことが、ある人にとっては大問題で、時に炎上することがあるのか?

なぜミュージシャン、画家、俳優など、表現者は反体制的な人が多いのか? 道徳観と職業には関連があるのか?


これらについて、道徳基盤理論を基に、「信念(価値観、ビリーフ)」「判断基準」「関連バイアス」「ホランドタイプとの関係」で考えてみた。

 

 

道徳基盤理論とは何か


道徳基盤理論は、文化人類学的研究(Shweder& Haidt, 1993)や社会心理学的研究(Haidt, Koller, &Dias, 1993)等の影響を受けながら、ジョナサン・ハイト(Jonathan Haidt、1963年 - )等道徳心理学者により、1990年代から発展し、邦訳もされたハイトの『社会はなぜ左と右にわかれるのか』(The Righteous Mind)により、広く知られるようになった。

 

ハイトによると、人の道徳観は次の6つのタイプがあるとしている。

 

これら道徳観は生まれつきのものであり、人は何か道徳的な逸脱場面に出会うと直観的にこの道徳観に基づき判断すると、道徳基盤理論は説明している。

  1. 弱者への配慮タイプ  (危害を被る側か与える側かで判断するタイプ)  
  2. 公正・公平タイプ  (公正か欺瞞かで判断するタイプ) 
  3. 忠誠心タイプ  (忠誠か背信かで判断するタイプ)
  4. 権威尊重タイプ  (権威を崇めるか崇めないかで判断するタイプ)
  5. 品位タイプ  (上品か粗野かで判断するタイプ)
  6. 自由タイプ (自由か抑圧かで判断するタイプ)  
もちろん、どれか一つだけに当てはまるというわけじゃない。
 
一人の人の中にこれらすべてが含まれており、その比率が異なるだけである。
 
ただし、そのバランスには傾向があるらしく、革新系(liberal)は、弱者への配慮(care)と公平さ(fairness)が強く、保守系(conservative)はそれぞれのバランスが取れているらしい。
 
YourMorals.orgによる132,000人の調査によると、次のグラフで示した結果が出ている。(The Righteous Mind、Fig。8.6 、p 187、2011年 www.)
 
 
弱者への配慮タイプ  (危害を被る側か与える側かで判断するタイプ)  

 

このタイプが強い人は、弱者(マイノリティ)への保護や思いやりを最優先に考える。

 

目の前の弱者を見ると「放っておけない」と直感的に感じ、ケアしたくなると言う。

■信念(価値観、ビリーフ)

  • 困っている人や苦しんでいる人を思いやることは何よりも大切なことだ。
  • 無防備な動物を傷つけることは、人間として最悪の行動の 1 つだ。
  • 人の命を奪うような行為は、どのような状況においても許されない。


■判断基準

  • 誰かが感情面・精神面で苦痛を受けたかどうか。
  • 弱い人や傷つきやすい人に対する配慮があったかどうか。
  • その人が残酷・冷酷であったかどうか。


■関連バイアス

  • 根本的な帰属の誤り:危害を被っている側に寄り添う反面、危害を加えている(と見える)側のそうせざるを得ない状況等を軽視しがち。
  • 現在バイアス:目の前のことを重視し、たとえ重要なことがあっても、遠くのこと、将来のことを後回しにする。

■ホランドタイプとの関連

  • A「芸術的」に該当?

A「芸術的」の特徴

内向的で、自分や他者の感情に敏感なため、衝動的になりやすく、不安感が強い。

繊細で感受性が強い。

型にはまるのを嫌い、規則や習慣を重視せず、自分の感性や独自性を大切にする。

独創性や想像力に恵まれており、音楽、美術、文学などに強い関心を示すことが多い。

 

 

公正・公平タイプ  (公正か欺瞞かで判断するタイプ)  

 

このタイプが強い人は、不公平な扱いを認めず、互恵性(互いに利益を与え合うこと)と共有された規範に基づく正義を最優先に考える。

それは必ずしも「弱者保護」という意味ではなく、既得権益を持つ「強者」を許さない、という気持ちが強いようだ。


■信念(価値観、ビリーフ)

  • 政府が法律を作る際の第一原則は、全ての人が平等な扱いを受けることを保障することだ。
  • 正義とは、社会にとって必要とされる最も重要なものだ。
  • 裕福な家庭の子だけが多額の財産を受け継ぎ、貧しい家庭の子は何も受け継がないというのは不公平だ。


■判断基準

  • 不公平な行動をとっていたかどうか。
  • 誰かの権利が否定されたかどうか。


■関連バイアス

  • 公正世界仮説:私たちの脳は「世界は公正にできている」と認識するため、他人に起こったことには理由があり、自分に何かが起こると犠牲者であるかのよう認識するようにできている。
  • 確証バイアス:信念を検証する際にそれを支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視または集めようとしない。

■ホランドタイプとの関連

  • S 社会的に該当?

S「社会的」の特徴

人に教えたり、援助したり、人と一緒に活動するのを好む。
社会的な責任感が強い。
他者に対する洞察力に富む。
人に対し親切かつ寛大である。
さまざまな人と良好な人間関係を作ることができる。
人の気持ちを理解し、敏感に反応することができる。

 

 

忠誠心タイプ  (忠誠か背信かで判断するタイプ)

 

このタイプが強い人は、所属集団への忠誠、誇り、を大切にする反面、裏切り者への怒りが直感的に湧く。

 

■信念(価値観、ビリーフ)

  • たとえ間違ったことをしたとしても、トップに忠実であるべきだ。
  • 自己表現して目立つよりも、チームの一員として振る舞う方が大切だ。
  • 私は、自分の会社や仕事を誇りに思う。


■判断基準

  • 自分の所属する集団を裏切るような行為をしたかどうか。
  • 行動が忠誠心に欠けていたかどうか。


■関連バイアス
ハロー効果:ある人に関して何か一つ優れた点を発見すると、その人はすべてにおいて優れている人だと勘違いする。


■ホランドタイプとの関連

  • R 現実的に該当?

(R「現実的」の特徴)
・対人的、社会的出来事への関心は乏しく、どちらかと言えば機械や物に対する関心が強い。
・そのため、機械を操作したり、物を作る能力に恵まれている。
・対人接触が不得手で、それを必要とする仕事を好まない。

 

 

権威尊重タイプ  (権威を崇めるか崇めないかで判断するタイプ)

 

このタイプが強い人は、伝統、正統性への服従、敬意を大切にする反面、権威を軽んじる人に対して怒りが直感的に湧く。

 

■信念(価値観、ビリーフ)

  • 子供たちは皆、我が国の歴史や伝統、社会的に認められた人などを敬うことの大切さを教わる必要がある。
  • 男性と女性には、それぞれ社会の中で果たすべき異なる役割がある。


■判断基準

  • 行動によって、無秩序や混乱が生じたかどうか。


■関連バイアス

  • 内集団バイアス:自分が所属する集団(内集団)のメンバーに対して、自分が所属しない集団よりも肯定的に評価したり好意的な態度を示す。


■ホランドタイプとの関連

  • C 慣習的に該当?

(C「慣習的」との特徴)
・人との和を重んじ、属する集団を一つにまとめることを重視する。
・人々の間に葛藤や混乱を起こさないように行動する。
・自発的、創造的に行動したり、自己主張をして自分がリーダーシップをとるよりも、権威者の指示に従うことを好む。
・反復的な事務的色彩の濃い活動などを好む。
・規則や習慣を重んじる。
・さまざまな状況に対しても順応的、協調的である。
・几帳面で、ねばり強く、また自制心に富んでいる。

 

品位タイプ  (上品か粗野かで判断するタイプ)

 

このタイプが強い人は、上品さ、純潔や神聖さの遵守を大切にする反面、粗野な人や汚辱を忌避する。

 

■信念(価値観、ビリーフ)

  • たとえ誰も傷つかないとしても、きわめて不快で、人の気持ちを逆なでするような行動をとるべきではない。
  • 自然の道理に反している行為は間違っている。


■判断基準

  • 清らかさや礼儀・品位を損なっていたかどうか。
  • きわめて不快で、人の気持ちを逆なでするようなことをしたかどうか。


■関連バイアス

  • 確証バイアス:信念を検証する際にそれを支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視または集めようとしない。


■ホランドタイプとの関連

  • I 研究的に該当?

(I「研究的」の特徴)
・抽象概念や論理的思考に強い関心を持つ。
・合理的で几帳面であると同時に、内向的である。知的にも、教育的にも要求水準が高い。
・物事を数理的に処理し、論理的に考え、解釈する能力に恵まれている。
・指導性や統率力はあまりない。物事を1人で成し遂げることを好み、グループでの活動を好まない。
・科学や芸術に対して高い価値を置く反面、社会的、経済的あるいは政治的問題に対してはあまり関心を持たない。

 

自由タイプ (自由か抑圧かで判断するタイプ)

 

このタイプは「経済的自由」「生活様式の自由」の2種類に分けることができるが、どちらにしても権力からの自由(liberty)を意味しており、独裁的なやり方や抑圧を嫌う。

 

■信念(価値観、ビリーフ)

  • 社会に何か言われなくても、各自が自分の生活に責任を持てれば、社会は最もうまくいく。
  • お互いの自由を侵さない限り、自分で自分の進むべき道を選ぶ自由があるべきだ。
  • 人々は、どのようなルールや伝統に従って生きていくか、自由に選べるべきだ。
  • ビジネスで成功している人は、本人が納得するまで報酬を得る権利がある。


■判断基準

  • 規制によって自由が妨げられていないか。


■関連バイアス

  • 利用可能性ヒューリスティック:想起しやすい事柄を優先して評価してしまう。
  • 代表性ヒューリスティック:特定のカテゴリーに典型的と思われる事項の確率を過大に評価する。


■ホランドタイプとの関連

  • E 企業的に該当?

(E「企業的」の特徴)
・新しい事業や計画を企画したり、組織作りをしたり、組織を動かすなどの活動を好む。
・権力や地位を重視する。
・指導力、説得力、表現力に恵まれ、積極的で社交性に富む。
・他人に従うよりも、自らリーダーシップを発揮して、新しい仕事を開拓していくことを好む。