久々に沢木耕太郎さんのノンフィクションを読んだがとても面白かった。


登山家山野井さんご夫妻のヒマラヤにあるギャチュンガンという山へのアタックを描いている。


どちらかと言えば海派の私も20代の頃、一度だけ3000mの北岳に登ったことがある。

夏の朝日をうける山の美しさに感動したもののサーフィンのテイクオフのドキドキ感の方が自分の性分にはあっていたんでしょう。


ハイキングの延長線上の夏山と冬山は全く別物。さらに8000m級の山に挑む人たちの心は計り知ることができない。


ヨセミテに観光に行った際にものすごい高さの壁をよじ登るクライマーを見かけた。

彼らは壁に引っ掛けたハンモックのような物で休みながら何日もかけて頂上まで登ると聴き、高所恐怖症の自分は到底理解できなかった。

高い壁に挑むクライマーの世界では当たり前の世界のようだ。


山野井夫婦が挑んだヒマラヤのギャチュンガンは8000m級の氷の壁である。


そんな過酷なところに挑む代償は大きい。

凍傷で手や足の指を切り落とす状況って尋常では無いじゃないですか?

なぜそんな苦しい思いをしてまで登るのか?


山野井さんご夫妻の感覚は常人では理解できないが、一つの判断ミスで命を落としかねない山でお互いに命を預け合えるパートナーがいるのは心強いのでは無いか。

2人がお互いに足りないパーツを埋め合えるベストパートナーであることは唯一理解できた。


そもそも女性のほうが痛みに強いと言われるが、男なら悲鳴をあげる痛みに対してびくともしない。凍傷で手と足のほとんどの指を失っているこの奥様の痛みの強さの描写が凄すぎてかっこいい。


なんの気無しに沢木さんの本というだけで手に取ったが、普段あまり興味の持てなかった山の世界の話を一気に読ませる文章の力に脱帽でした。