映画『証言』と6月25日、朝鮮戦争 | 一松亭のブログ

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6月25日は朝鮮戦争が勃発した日です。1950年6月25日、突如北朝鮮の軍隊(人民軍)が38度線を越え奇襲、怒涛の南進を開始します。不意打ちにより重火器のほとんどない韓国軍(国軍)は総崩れとなり後退します。ここに朝鮮戦争が勃発します。この開戦時から国連軍(UN軍)インチョン上陸、反攻に転じるまでの3ヵ月を描いた韓国映画の名作に『証言』があります。日本国内ではビデオでは「ホワイト・バッジ ファイナル 史上最大の作戦」DVD では「ソウル奪還大作戦 大反撃」で発売されています。
ビデオのタイトルが酷いのは多くの例があります。ビデオの「ホワイト・バッジ」も大殺戮外人部隊というサブタイトルですが、ベトナムに派兵された韓国軍兵士たちの戦地でのつらい体験による心の傷を描いた物語でアン・ソンギ主演の名作です。以降ベトナムを題材とした韓国映画に「ホワイトバッジ2、3」があるほか戦争映画だからということか朝鮮戦争を題材にしたものに「新ホワイト バッジ~地獄への戦場」があり、この『証言』がファイナルです。


この朝鮮戦争を題材とした2作が、「西便制」「曼荼羅」など数多くの名作を生んだ名匠イム・ゴンテク監督によるもので、この『証言』(ホワイト・バッジ ファイナル 史上最大の作戦)は1973年に朝鮮戦争休戦20周年を記念して制作された国策映画で、常に備え国力を強くしようというメッセージはありますが戦争映画として名作だと思っています。
恋人のチャン少尉(シン・イルリョン)と開戦で別れた大学生スナ(キム・チャンスク)の逃避行をその間の様々な戦争の悲劇を交えドキュメンタリーのように描きます。他の犠牲者の持っていた生米をかじり、北朝鮮軍の脱走者とともに戦火を潜り抜けやっと韓国軍の陣地にたどり着きましが、その過程で多くの惨劇を目にします。スナの目を通し証人としてこの戦争の酷さを切々とうったえます。チュ・ソンテ、ファン・ヘ等当時の名優が数多く出演しています。橋が爆破されるシーンが出てきますが、これが避難民が渡っているにもかかわらず爆破され民間人800人あまりが犠牲になる漢江人道橋爆破事件でいかに混乱がひどかったかがわかります。なお、この橋の爆破でトラウマに苛まれる兵士が出てくる映画が「トンマッコルへようこそ」です。


その後、中国の志願軍の参戦を経て半島全土を戦場とする酷い闘いが続き、1953年7月27日に朝鮮戦争休戦協定により休戦に至りますが、以降南北二国の分断状態はさらに強固となり今に続くこととなります。また双方で多くの政治的立場の違う、またそのように疑われた民間人への虐殺が起こりました。
この戦争を思う時、今進行しているロシア・ウクライナの戦争と共通のものを感じる方は多いでしょう。朝鮮戦争ではアメリカの国務長官が直前「それ以外の地域(朝鮮半島は入る)には責任を持たない」と言っており、ロシア・ウクライナ戦争ではバイデン大統領が前年、「戦争になっても米軍は派遣しない」と言っています。指導者の思い込みや都合のよい情報が判断を狂わせたのも似ています。朝鮮戦争では何としても南進したかった金日成(キム・イルソン)に脱南してきた南労党の朴憲永(パク・ホニョン)が「人民軍が南下すれば南の20万南労党員が立ち上がり人民軍を支援する」と宣言しました。
一方ロシア・ウクライナ戦争ではプーチン大統領に入った情報から、侵攻すればウクライナ軍はすぐ降伏しウクライナの現政権が倒れると判断してしまったと言われています。
結果は、どちらも違っていたのは周知のとおりです。指導者達の誤った判断による多くの犠牲者は浮かばれないでしょう。
無論、戦前の麗水・順天軍乱から映画「太白山脈」に描かれた山にこもった南労党系のパルチザンがいたのは事実ですが、とても朴憲永のいう規模とは遠いものでした。何より今の戦争が早く終わることを願います。


最後に、この映画『証言』の最後に流れる歌が「6.25
의 노래」(6月25日の歌)です。「ああ、どうしてあの日を忘れられようか」で始まり防衛、勝利と進撃の決意を歌っており、名曲だと思います。戦中にできた曲ですから言葉は激しいです。北の軍隊をオランケ((軽蔑的に)中国東北地方に居住した女真族。)と言っているのが印象に残ります。

この歌はYotubeに多くが乗っているので、紹介しておきましょう。
これは背景の画像がこの映画『証言』です。
6.25 
의 노래Song of the 6.25 - South Korean Military Song 【韓國軍歌】6.25之歌

 

 

チャン・ドンゴン主演の「ブラザーフッド」が背景のものもあります。

6.25의 노래【韓國軍歌】6.25之歌 - South Korean Military Song
(Yotubeのタイトルだけ記載します。)

以下は前半は延々と続く避難民、後半が累々と続く民間人の犠牲者の画像なので、見たくない方もいると思います。その場合は前半だけでとめてください。6.25
의 노래 (가사) 

(こちらもYotubeのタイトルだけ記載します。)
でも、ここにまさしく今のウクライナで同じことが繰り返されている事を知っていただけるでしょう。さらにこの苦難を乗り越えての今の繁栄があることも思い出していただきたいと思います。