マラマッドの短編『はじめの七年』読了。
とりあえず、結婚だ。-宗教者をめざして勉強する青年は決断した。しかし現れた仲介業者がどうも怪しい。“樽いっぱい花嫁候補のカードだよ”とうそぶくのだが…。ニューヨークのユダヤ人社会で、現実と神秘の交錯する表題作ほか、現代のおとぎ話十三篇。
目次(「BOOK」データベースより)
はじめの七年/死を悼む人々/夢にみた彼女/天使レヴィン/「ほら、鍵だ」/どうか憐れみを/牢獄/湖の令嬢/ある夏の読書/請求書/最後のモヒカン族/借金/魔法の樽
マラマッドにしては珍しい?ちょっと自然主義的な作品。
なんとなく『ダブリン市民』のジョイスを思い起こす。
靴屋のフェルドは娘ミリアムの幸せを願い、
大学に通うマックスとの婚姻を画策するが、
期待も虚しく失敗してしまう。
その間に信頼の置けるポーランド難民の助手ソベルが
靴型を壊し店から出ていってしまう。
新しい助手を雇うが、その助手が売上を着服していたことを知り、
心臓発作で3週間も寝込んでしまう。
妻に説得され、ソベルを呼ぶべく彼の下宿へ向かうが…。
古いユダヤ社会を象徴するようなフェルドと対比される
ミリアムやマックス、それに「よそ者」のソベル。
時代の変わり目を冷静に写し取るその筆致は
極めてストイックで、無駄の一切ないものである。
それでいてどこか寓話性を漂わせているような気もするのは
不思議と言う外ない。