倉橋由美子『パルタイ』読了。

 

〈革命党〉に所属している〈あなた〉から入党をすすめられ、手続きのための〈経歴書〉を作成し、それが受理されると同時にパルタイから出るための手続きを、またはじめようと決心するまでの経過を、女子学生の目を通して描いた表題作。ほかに『非人』『蛇』『密告』など。存在そのものに対する羞恥の感情を、明晰な文体で結晶させ、新しい文学的世界の出発を告げた記念すべき処女作品集。

 

なんというか、骨格標本のような作品というか、

「戦後派」の文体や文章を型枠にとって、そのまま提示したような、

言い換えれば実験性を非常に感じる作品であり、不思議な印象を受ける。

本作が発表されたのは1960年で、安保闘争の年である。

いわゆる「政治の季節」のど真ん中にこういう作品が出たという事は

非常に面白いと思う。

 

タイトルにもなっている「パルタイ」とはドイツ語でパーティー、

つまり党(派)のことである。

本作発表当時、それは具体的には共産党のことを意味したわけだが、

今読んでみると、これは何も共産党に限った話ではないのではないかと思う。

誰もが、濃淡はあれ、「パルタイ」的なものを自分のうちに秘めている。

特に今日のようなSNSの時代には、法ではなく、

パルタイの論理に従っているように見える人は散見される。

人は元々群れる動物だから、群れの外に敵を作ることによって団結し、

時に「炎上」を惹き起こすのである(例えば星野源と新垣結衣への攻撃のように)。

 

こうした人の本質というのは、おそらくずっと変わらないだろう。

前回の記事でも書いたように、

人の攻撃衝動と性行為衝動は隣り合っているからだ。

 

余談だが、本作は斎藤美奈子によってめでたく「妊娠小説」の認定を受けている。

 

 

面白い分析がなされているので、興味のある方は見てみるとよい。