そしてぼくは蝶のように
虫取り網から逃れ
糞臭い牛の尾からも逃れ
畑の中を
ひらひら、ひら
と舞う
人の子らが指差す
その虚空の
ジグザグ道の上を
辷っていく

けれと畑地の上に
バラ撒かれた殺虫剤は
虫取り網、ではない。
糞の臭いに塗れた牛の尾、
でもない。
僕たちは ただ
それに塗れた
葉を齧るまでの間の
命。
たった少しの、命

 

 

蝶|藤盛槐 (note.com)