T.ピンチョンの短編小説『少量の雨』読了。

 

『重力の虹』など、現代アメリカ文学史上に聳える3つの傑作長編を発表後、十余年の沈黙の後に、天才作家自身がまとめた初期短篇集。「謎の巨匠」と呼ばれてきたピンチョンが自らの作家生活を回顧する序文を付した話題作。ポップ・カルチャーと熱力学、情報理論とスパイ小説が交錯する、楽しく驚異にみちた世界。

 

訳者の志村正雄による解説によれば、

1957年6月に実際に起こったハリケーン災害に基づくフィクションで、

ピンチョンがコーネル大学在学中に発表された最初期の短編という事だ。

 

人種や言語、そして生のなかにある日突然やってくる死の理不尽さについて、

短いストーリーの中にぎっしりと詰め込まれている。

同大学在学中はナボコフが教えていた授業もとっていたようだから、

ピンチョンの創作術はある種筋金入りと言えるだろう。

読み終えた後、まるで一巻の映画を見たような気分になる。