野坂昭如の短編『火垂るの墓』読了。

 

昭和20年9月21日、神戸・三宮駅構内で浮浪児の清太が死んだ。虱だらけの腹巻きの中にあったドロップの缶。その缶を駅員が暗がりに投げると、栄養失調で死んだ四歳の妹、節子の白い骨がころげ、蛍があわただしくとびかったー浮浪児兄妹の餓死までを独自の文体で印象深く描いた『火垂るの墓』

高畑勲によるジブリ作品であまりにも有名だが、

原作の文体はもっとドライで、

野坂自身の体験に基づく哀切な戦災孤児を題材にとってはいるが、

描かれているのはもっと普遍的な、人間の絶対的な孤独、

あらゆる共同体的なものからははみ出さざるを得ないものの孤独と

実存の問題であるように感じられた。

 

 

 

そういう意味で、これは単なる反戦小説ではなく、

まさしく現代の人間を描く小説であると思う。