ここ数年、映画を見る体力がなくなったととみに思う。

見たい作品はいくつもあるのだけれど、

画面の前に1時間半~長ければ4,5時間も坐って、

意識を画面に集中させていることが難しくなった。

僕にとって映画は、だからそれくらい集中して見なければならないもので、

関心を持てる大半の映画は流して見る程度のものではないのだろう。

しかし、裏返せばそれは、

塵ひとつも逃さぬくらい集中して見なければならない

「映画」という制度への、僕の無意識の抵抗とも言えるかもしれない。

だからそれは制度としての「美 Beau」への抵抗でもある。

僕にとって「映画」は、まず第一に美を探求するものでなければならないからだ。

娯楽性やメッセージ性は二の次なのである。

 

 

 

 

『KIDS』『ガンモ』と快進撃を続けるストリートの天才・ハーモニー・コリン監督作品。ジュリアンは精神分裂の男の子。精神分裂のヒトを描く作品って、“ピュア”信仰が強かったり、映像にノイズがやたらたくさんと入ってたりする。おいおい、今度はどっちだよー? って感じなんだけど、この作品はその両方とも押さえちゃってるからエライ。酒で記憶が落ちる瞬間やグラウンド10周して頭が白くなる瞬間とか、フツウ一瞬しか観ることができないガサついた映像を見事につなげている。ポエトリーなのに焦燥感がある不思議な世界。 (永田みゆき) --- 2001年10月号 -- 内容 (「CDジャーナル・レビュー」より)