広瀬川白く流れたり

時さればみな幻想は消えゆかん。

われの生涯(らいふ)を釣らんとして

過去の日川辺に糸をたれしが

ああかの幸福は遠きにすぎさり

ちひさき魚は眼にもとまらず。

 

 

 

「詩はただ病める魂の所有者と孤独者との寂しい慰めである」といい、ひたすら感情の世界を彷徨しつづけた萩原朔太郎は、言葉そのもののいのちを把握した詩人として、日本の近代詩史上、無二の詩人である。代表作『月に吠える』『青猫』等より創作年次順に編まれた本詩集は、朔太郎(1886-1942)の軌跡と特質をあますところなくつたえる。