私は悲鳴を上げていた。
逃げ場のない袋小路の中で
藻掻きながら
足掻きながら
大きな網の目のなかに
雀のように
囲い込まれようとしていた。
どこかで誰かが
窓を開ける音がした。
「うるさいぞ」
私は黙らなかった。
黙り様がなかった。
悲鳴を上げながら
走り続けていた。
結び目から結び目へ
私は伝って逃げていた。
けれどもやがて網の目は
巾着のように窄められ
私の運命は終るのだった。
繰返し 繰返し
私は悲鳴を上げながら
鎖場のような結び目を攫んでは
次の結び目へと走った。
「いい加減にしてよね」
「ぶっ殺すぞてめえ」
怒号はあたり一面から湧いて出た。
けれども私は黙らなかった。
黙れなかった。
懸命に悲鳴を上げながら
結び目から結び目へと
まるでヒマラヤ登山でもするように。
悲鳴は谺となって響き、
ただそれだけだった。
帰ってくるのは
敵意を剥き出しにした
怒号だけだった。