あの日を境に、私は「軽さ」を失った――
シャルリ・エブド襲撃事件生存者、喪失と回復の記録
2015年1月7日、パリで発生したテロ事件により12人の同僚を失うなか、 ほんのわずかな偶然によって生き残ったカトリーヌ。
深い喪失感に苛まれながらも、美に触れることによって、 彼女は自分を、その軽やかさを少しずつ取り戻す。
●2019年4月7日(日)「毎日新聞」朝刊に書評が掲載されました!
「これは同僚を失った彼女が心の傷から回復してゆく過程の物語である。治療の旅路の記録。(…)
この本はBDという形の私小説である。トラウマ治療の一つの事例。(…) 翻訳は秀逸。」
(評者:池澤夏樹さん)
●2019年3月28日号「週刊新潮」に書評が掲載されました!
「前半のモノトーンの絵から後半の鮮やかな色彩に変化していく。 彼女の回復が鮮やかに記録されている。」
(評者:東えりかさん)
●2019年4月号「本の雑誌」に書評が掲載されました!
「静けさを感じる色合いのページをみていると、こちらの気持ちもいろと同化していくようだった。(…)
絵と言葉が織りなす世界は、失ったものの重さから少し息がつける入り口を描いている。」
(評者:林さかなさん)
序文:フィリップ・ランソン(2018年フェミナ賞受賞)
ヴォランスキ賞(ル・ポワン誌主催)、ジュネーヴ・テプフェール賞受賞
アングレーム国際漫画祭作品賞最終ノミネート
「スタンダール症候群」なんて
求めて何になるの?
結局、わたしも症候群に
陥ったわけよ。でも逆の順番で
まず失神があった。
わたしの内面の失神で、それは
事件のショックによるものだった。
そして目を覚ますと、美に憑かれた
混乱が遠ざかると、理性が復活し、
均衡と感覚が同時に戻った。
以前ほど濃密に見えないけれど、
見たことを覚えている
わたしはちゃんと
目を覚ましていたいと思う。
美からのわずかな合図も
見逃さないようにして
その美によって、
わたしは救われる。
ふたたび「軽さ」を
取り戻す
カトリーヌ・ムリス 2016年2月
如何なる国家、組織、共同体にせよ、
そのために「個」を犠牲にしても何ら構わない、という考え方に、
僕はやはり根本的に相容れないのだと思う。
イスラエル軍がやっていることも、
イスラーム(原理)主義組織がやっていることも、
どんなみせかけの理屈を付けようとも
被害者の立場から見れば同じテロ行為なのだ。
赤、白、緑、黒…あらゆるテロ行為に、
僕は反対する。