昨日、U.ハイヤームの詩集『ルバイヤート』を読んだ。

 

過去を思わず未来を怖れず,ただ「この一瞬を愉しめ」と哲学的刹那主義を強調し,生きることの嗟嘆や懐疑,苦悶,望み,憧れを,平明な言葉・流麗な文体で歌った四行詩の数々.十一世紀ペルシアの科学者オマル・ハイヤームのこれらの詩は,形式の簡潔な美しさと内容の豊かさからペルシア詩の最も美しい作品として広く愛読されている.

 

ハイヤームの詩は美しい。

そこには確かに、ある種のペシミズムがある。

だがこれはショーペンハウアーのようなものとは断じて違うのである。

寧ろそれは古代ギリシア人が悲劇の形式で表していたペシミズム、

ニーチェ的な、運命愛や超人的なペシミズムである。

スピノザ的と言ってもいい。

 

「ルバイヤート」とはペルシア語で四行詩集の意であり、

四行詩そのものは「ルバーイイ」と呼ばれるという。

訳者の小川亮作は解説で面白いことを言っていて、

このルバーイイの形式が日本の伝統的な詩歌の形式、

即ち七五調と近似しているというのである。

 

思えばルバーイイも日本の伝統的な詩歌(特に和歌)も、

元々は民衆によって朗誦されるものであった。

心理学では一つの意味のまとまりの事をチャンクと呼び、

人間が短期記憶で保持できるチャンクは7±2チャンクであると言われる。

 

心理学用語:記憶 【感覚記憶・短期記憶・長期記憶】|サイエンス.COM (viuoscience.com)

 

それは『ルバイヤート』中の次の詩でも確認できるのではないだろうか。

143

いつまで一生をうぬぼれておれよう、

有る無しの論議になどふけっておれよう?

酒をのめ、こう哀しみの多い人生は

眠るか酔うかしてすごしたがよかろう!

 

138

仰向けにねて胸に両手を合わさぬうち、

はこぶなよ、たのしみの足を哀しみへ。

夜のあけぬまに起きてこの世の息を吸え、

夜はくりかえしあけても、息はつづくまい。

 

134

酒をのめ、マハムードの栄華はこれ。

琴をきけ、ダヴィデの歌のしらべはこれ。

さきのこと、過ぎたことは、みな忘れよう。

今さえたのしければよい――人生の目的はそれ。