太宰治『雌に就いて』読了。
前回に続いて新潮文庫の短編集より。
まあ良くも悪くも太宰的な作品、と言える。
銀座のホステスだった田部シメ子との心中一件をモデルにした、
とも言われている。
太宰は何度も自殺未遂を起こしている。
中には女性を巻き込んだ(あるいは巻き込まれた)ものもあり、
周知のように最後は玉川上水で入水して死んでいる。
猪瀬直樹はこれを、太宰の一種の「アリバイ作り」だと言っていたが、
本作品を読むと「さもありなん」という感じがする。
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注意すべきはここに既に、
後年太宰自身が「家庭の幸福は諸悪の根源」と書きつけた思考の萌芽が
見られることだろう。
戦前昭和に生まれた大衆的、小市民的価値観への反逆。
太宰治のこうしたロマン性を、そのミソジニー性とともに、
僕らは今一度、解剖して見なければならない。