小田亮著『レヴィ=ストロース入門』読了。

 

若きレヴィ=ストロースに哲学の道を放棄させ、ブラジルの奥地へと駆り立てたものは何だったのか?彼の構造主義を中心とする思考は、現代思想にも深い影響を与え、西洋の自文化中心主義への反省と主体の解体をうながす大きな役割を果たした。本書は、レヴィ=ストロースの代表作『親族の基本構造』『野生の思考』『神話論理』をとりあげ、彼が未開社会の親族構造や神話研究から汲みあげた豊かな思考の可能性の核心を読み解く。しばしば誤解されがちな「構造主義」をホントに理解し、ポストコロニアル論にも活かすための新しいレヴィ=ストロース入門。

 

サルトルへの批判を通じて

デカルト以来の近代的主体を中心に据えた西洋形而上学の人間観や歴史観、

社会観を批判したC.レヴィ=ストロース。

本書を読むと、その関心が一貫してフロイトにあったことが分かる。

なにしろ最初の主著『親族の基本構造』にしてからが、

インセスト・タブー(近親相姦の禁忌)をめぐるものなのだから。

 

後期の4巻からなる大著『神話論理』でもその片鱗は見られる。

北米からオセアニアに至るまで、あらゆる部族の神話は、

「パパ-ママ-ぼく」というエディプス的な三角形を祖型ないしは末裔とする

「構造」内の「変換」として捉えられる。

このことはユングやF.ファノンらとより対比して捉えられるべきかもしれない。

 

とはいえ、レヴィ=ストロースが現代思想に「構造」という

数学的かつ言語学的な概念を導入して見せたことの意義は

たしかに計り知れない影響を持ったのは事実だろう。

特に「構造」が一般的に、

数学?で言うところのマンデルブロー集合のような形態をとることは

非常に興味深いと思う。

 

この事を起点にレヴィ=ストロースの言う「基本構造」や「真正な社会」

あるいは「野生の思考」というものを捉えるなら、

本書の著者の言うようにP.クラストル的な抵抗へと接続することは

おそらく大きな意味を持つ。