J=P.クライン著『芸術療法入門』を読んだ。

 

 

うつ病から統合失調症まで、心のストレスを克服するために! 音楽、絵画、演劇、人形劇、化粧……さまざまな表現方法で精神を解放してゆく芸術療法。アートセラピー入門の決定版。

 

箱庭療法や風景構成法を別とすれば、

日本における芸術療法(アートセラピー)の認知と普及は今一つな気がする。

それは芸術というものが、この社会においては、

社会的なものの余剰と捉えられているからであろう。

しかし人間が理性的な言語によって理解している物事の範疇は実は物凄く狭い。

実生活においてはヒトはそのほとんどを直観によって把握している。

「生きる」とはつまり、記号(シーニュ)を読み解き続けることである。

 

G.ドゥルーズは記号を「習得」するものだという。

 

 

そこでは記号は解釈することよりも習得し、行使することが重要視される。

ひとつの芸術作品を鑑賞することも、こうした「習得」に近い経験だろう。

訳者の阿部惠一郎によるあとがきによれば、

本書の著者クラインも、そうした解釈をあまり好まず、

表現精神病理学的なものに対してはかなり批判的な姿勢のようだ。

これはある意味では晩年のD.ウィニコットに近い態度かも知れない。

 

芸術は確かに「気晴らし」であり、「余剰」であるかもしれない。

しかしヒトにとってそうした「あそび」(建築的・技術的な)は

実人生を生きる上では必要不可欠なものではないだろうか。

況してj精神を病んだり、社会的に疎外されている人たちにとっては。

不安定、不透明さが増している昨今の日本だからこそ、

芸術療法(アートセラピー)がもっと普及されればよいと願う。