王兵監督『苦い銭』を観た。

 

 

故郷を離れ、彼らは言う。「苦い銭を稼ぎに行くんだ」と。
14億が生きる中国の片隅で、1元の金に一喜一憂する出稼ぎ労働者たちの人生を描くドキュメンタリー。
ヴェネチア映画祭で脚本賞を受賞した、天才監督ワン・ビンならではのマジックが炸裂する!

【あらすじ】
働けど、働けど。
故郷を離れ、彼らは言う。「苦い銭を稼ぎにいくんだ」。
雲南省出身の15歳の少女シャオミンは、バスと列車を乗り継ぎ、遠く離れた浙江省湖州へと向かう。縫製工場で働くためだ。
そこは出稼ぎ労働者が80%を占める街。朝から晩まで働いて、ただ働いて。それでもそこには胸に響く一瞬がある。
初めて街で働きはじめる少女たちの瑞々しさ、酒に逃げる男、ヤケになる男……。
14憶が生きる巨大中国の片隅で、1元の金に一喜一憂する彼らの人生を想う。
そして気づく。“彼ら”は世界のいたるところに存在する“私たち”。

1元=約17円(2017.10現在)

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アイロン掛けは時給16元か18元だ
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社長の気前のよさは2元ね!
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1日150元稼げる奴もいる
俺みたいに70元しか稼げないのはダメだ
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こんな会話が、こんな表情が、こんな瞬間が、何故撮れるのだろう?
十四億人の生きる中国で名匠ワン・ビンが映し出す人生の色彩。

【監督の言葉】
『苦い銭』は、雲南の故郷を離れて、出稼ぎ労働者が多く働く中国東海岸の街へと向かう、3人の若者の姿を追う場面から始まります。
カメラはそれぞれの人物に近づき、彼らの過酷な労働の日々にあらわれる感情や、賃金を受け取ったときの失望を捉えます。
中国社会では、現代ほど「金」が重要な時代は、これまでにありませんでした。今、誰もが裕福になりたいと願っています。
しかし現実から見れば、それは誰もが空想の中に生きていると言うしかありません。
目にする限り、人生とは不毛です。幻想と失望に満たされた時代にあって、従順な人生を送るために、私たちはしばしば自分の気持ちさえ欺いているのです。
“流れゆくこと”は、今日の普通の中国人の重要なテーマです。
私は、彼らの物語を語るために、カメラのショットや捉える人物をずらしながら、ある被写体から別の被写体へ、焦点を揺らすようにひとつに絞らずに撮影しました。

 

 

 

 

中国は一般に「共産主義」社会と認識されるが、

この映画を見ると、

紛れもなく資本主義の一角を担っている国だとわかる。

働いても、働いても、ちっとも楽にならない社会。

「勤勉と節約が資本主義の原点だ」などと一体誰が言ったのか?

そんなものは寝言、戯言の類だろう。

もしそれが本当なら、

なぜ世界にはこんなにも貧しさに耐え忍んで暮らしてる人々がいるのか?