憲法記念日なので、ネット上でも憲法に関する話題が多い。

近年の改憲論議の高まりを受けて、各紙上でもアンケート結果などが示されている。

 

中でも第9条については僕も何年か前から少し考えていることがある。

それをここにまとめておこうと思う。

 

日本国憲法は1946年に公布され、翌47年に施行された。

つまり今日で75歳である。

当時はGHQの占領下であり、原案となったのもGHQ案だったが、

制定の過程では活発な議論がなされ、批判的意見もあった。

日本国憲法とは - コトバンク (kotobank.jp)

政府原案に盛り込まれた批判的意見の筆頭格が、いわゆる「芦田修正」だろう。

芦田修正とは - コトバンク (kotobank.jp)

その結果生まれたのが現在の憲法9条である。

 

 

 

 

 

9条をめぐっては条文の解釈が度々議論になる。

たしかに通常の日本語文としては悪文である。

しかし僕は条文の元々の意味を損なわないままこれを改定することは

極めて難しいだろうと思っている。

なぜなら、9条が提起してるのは単純な「自衛権の放棄」などではなく、

ましてや自衛権行使の無際限な認容などでもなく、

自衛権の行使可能な範囲を国内に限定する条項だと読むからだ。

その根拠は条文中の句読点の使い方にある。

 

プロであれアマチュアであれ、

物書きという人種は、自分の文章を書くうえでも他人の文章を読むうえでも、

句読点というものを非常に気にするのではないかと思う。

実際句読点は打つ位置一つで文章の意味がまるで変ってくる。

文化庁文化審議会国語分科会が昨年、公用文作成に関して示した指標でも、

このことは指摘されている。

92968501_01.pdf (bunka.go.jp)

また新大学生や就活生などはよく文章の書き方的な指南本を目にすると思うが、

そこでもそうしたことは指摘されている。

一例としてはこのようなものがある。

句読点の正しい使い方とルールを覚えて文章を見やすくする | upwrite

 

9条の文体は他の条文と比べても独特で異様である。

普通に憲法を読んでいても、他の条文にはさほど引っ掛かりがないのに、

ここだけが何か魔的なオーラを放っている。

日本国憲法 | e-Gov法令検索

これは単に、その句読点の打ち方が独特だからだろう。

文節がどこにあり、

主語文と修飾文、述語文とがそれぞれどこに係っているかを

非常に注意して読まなければ、

簡単に読み誤ってしまう文章だろう。

その結果、無際限な自衛権否認だの、必要最小限の軍備だのといった、

明後日の方向に行ってる解釈が容易に生まれてきてしまう。

 

しかし、美は乱調にある。

僕はこのような憲法第9条を非常に愛しているし、

これが廃棄されることは絶対に望まない日本人の一人である。

 朕は、日本国民の総意に基いて、新日本建設の礎が、定まるに至つたことを、深くよろこび、枢密顧問の諮詢及び帝国憲法第七十三条による帝国議会の議決を経た帝国憲法の改正を裁可し、ここにこれを公布せしめる。


  御名御璽
   昭和二十一年十一月三日
    内閣総理大臣兼
    外務大臣    吉田茂
    国務大臣 男爵 幣原喜重郎
    司法大臣    木村篤太郎
    内務大臣    大村清一
    文部大臣    田中耕太郎
    農林大臣    和田博雄
    国務大臣    斎藤隆夫
    逓信大臣    一松定吉
    商工大臣    星島二郎
    厚生大臣    河合良成
    国務大臣    植原悦二郎
    運輸大臣    平塚常次郎
    大蔵大臣    石橋湛山
    国務大臣    金森徳次郎
    国務大臣    膳桂之助

 

※ 9条第2項に記された二つの「これ」という指示代名詞は、第1項に記された「国際紛争を解決する手段として」の「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使」と捉えるべきだろう。そうでなければこの二つの指示代名詞は文面上明らかに不要である。