洞穴のなかで彼/彼女らは呻いた
わたしたちの故郷はどこにあるのか、と
わたしたちを取り巻いていた筈の悠久は
一体何処に消えてしまったのか、と
彼/彼女らは言う
かつてわたしたちの故郷は
花が咲き、鳥が囀り、山羊が鳴いた
抜けるような青空の下
庭先には長閑な歌声が響き、人々は踊った
それだのに今は
海は汚れ、空には爆音が轟き、女らは弄ばれる
歌声は掻き消され、躍りの手は止まったままだ
あの雨がやって来て以来は
わたしたちの骨肉はただ
虚しい時間に削ぎ落とされる
かつてわたしたちの故郷が
あの雨に梳られたように
そして今もまだ
わたしたちのこころは梳られているのだ
こころ無い砲弾のような言葉に
故郷よ、お前は今、
果たして何処にいるのだ
永遠に巻き戻される時間
ここはまだあまりに血腥い
故郷よ、せめてその光を、
わたしたちの落ち窪んだこの眼に
投げ入れてくれ
たとえその光が何れにあるにしても
わたしたちを
この暗がりから連れ出してくれ…