忘れないで、と言うその言葉は誰が
道傍の草にさえまだ潮の匂いが残っている
柔かな歌声
響いている どうか安らかに
命という言葉が
あれほど試されたことはなかったのだ
わたしたちはまだ
その残照のなかに生きている
仄灯り
けれどまたすぐに曇る
思い通りにいかない日は寝てしまえばいい
ゆっくりと、またゆっくりと
歩みは続いていく
渚に揺れる残照を辿って
また春が来る
あなたのいない春が。