時は青銅となって最後の時代に入る。
あなたひとりだけが銀色のままここに。
そして、たそがれの中で、沈みゆく深紅の蛾を悼んでいる。
雲を奪(と)り合って、深紅の蛾と言い争っている。
あなたの心が没落をまるで知らなかったというのではない。
闇があなたの目にまるで命じたことがなかったというのではない……
とはいえ、あなたの手のひらはまだ月のなごりをたたえている。
そして、水中では、月の光が一筋まだ身もがきしつつあらがっている。
空の青を映す砂利の上方で、
水の精ニンフたちと軽やかに輪踊りする者が、
森の中にまだアルテミスの矢がまぎれていて、
最後には自分をとらえると、考えていけないはずがどうしてあろう?