日本国憲法公布の日、
そしてその精神に基づいて制定された「文化の日」なので、
ちょっと青空文庫のことについて書いておこうと思う。
僕が青空文庫を利用し始めてからたぶん10年以上(12、3年?)にはなる。
青空文庫の誕生はそれよりさらに遡って1997年だから、
かれこれもう19年、来年にはめでたく成人ということになろう。
その青空文庫が著作権を70年に延長しようという世の動きに
明確に反対の姿勢を示したのは2005年、今から12年前のことだ。
以来運営者たちはこの姿勢を堅持している。
http://www.aozora.gr.jp/shomei/
青空文庫の考え方の肝は、
所謂著作権フリーすなわち著作権廃止運動とは明らかに違う、ということだろう。
著作権者の一定期間の権利は認めつつ、
その期間を過ぎれば作品は公共のものとして扱われ、
そのことで更なる文化の発展に寄与できるとするところにある。
実際18~9世紀欧米では公立博物館や美術館の創設が
その後の文化発展に大きく寄与し、
20世紀以降の文化の礎となったことは疑いようがない。
そこには経済学で言う「公共財」という考え方がある。
書物や絵や音楽、美術品といった創作物の権利は
たしかにそれを創作した者に認められるべきだろう。
より優れた作品や多様な作品の創造は
そうした権利が守られて初めて可能になるからだ。
一方で、そうした権利があまりに長く過剰に守られることは、
かえって創造行為や文化の発展を阻害してしまうことにもなりかねない。
ちょうど森の中で大木の繁茂が若芽の成長を阻害するように、
古い文化は若い文化の抑圧者となってしまうだろう。
文化発展という面から言えばそうした抑圧はある程度必要なのかもしれないが、
行政や司法が法制度によって古い文化の過剰な保護に回ることで、
そのバランスは大きく崩れ、文化は停滞してしまうだろう。
青空文庫が提起するようなこうした著作権保護期間の延長反対は、
今国会で審議中のTPP議論に関連してもっと注目されるべきだろうと思う。
TPP議論では生活に直結することもあってか
農業や食品、医療ばかりがともすると議論の中心となりがちだが、
TPPの条項の中には
この著作権保護期間を70年に延長するというものも含まれていて、
成立すれば日本を含めた加盟国の文化状況が大きく変わってしまうことが予想される。
米国ではこうした著作権保護期間を定めた法律は
一般に「ミッキーマウス保護法」と呼ばれる。
それはミッキーマウスの著作権期限が切れそうになるたびに
W.ディズニーの遺族等権利者たちが期間延長を求めて来たからで、
最近では期間を100年に延ばそうとしているという話もある。
TPPによってこうした流れが太平洋諸国の間で常態化してしまえば、
加盟諸国の文化経済状況は今後致命的な打撃を被るかもしれない。